Googleの4つの新プロジェクト:Soli、Jacquard、Vault、Abacus

Google I/O 2015では、Androidの新バージョン以外にも、興味深い新プロジェクトが4つ発表されました。ウェアラブル関連のSoliとJacquard、セキュリティ関連のVaultとAbacusを紹介します。

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先日のGoogle I/Oカンファレンスでは、新バージョンのAndroidや他にも予想されていた新サービスのほか、Soli、Jacquard、Vault、Abacusという4つの新プロジェクトが発表されました。こうした興味深い技術がどんなものなのか、どうやって私たちの世界をより良くしていくのか、見ていきましょう。

Project Soliは、スマートウォッチやフィットネスバンド向けの小型センサーです。手の動きを正確に追跡し、ジェスチャーによる操作も可能です。ジェスチャーを使ってできるのは、デバイスの操作(小さな画面でさらに小さいUIを操作するよりずっと便利)と、エコシステムの制御(Bluetoothなどのワイヤレス接続を使ったコマンドの送信)です。

ご存じのとおり、現在のジェスチャー認識技術は、主に、何台かのカメラで撮影した画像の分析を基本としています。この方法は、部品がたくさん必要なのでコストがかかりますし、高水準の処理能力と電力も必要です。

Soliセンサーは、基本的に、2つのアンテナだけを使って60GHzの周波数で動作する超小型レーダーです。1秒あたり10「フレーム」をスキャンし、ほぼ瞬間的に応答します(この種のインターフェイスでは、とにかく応答の速さが重要です)。

しかもKinectと違って、一生懸命手を振り回す必要はありません。Soliは小さなジェスチャー(指をこする、パチンと鳴らすなど)を検知できるのです。

このインターフェイスが操作をどれくらい「早く学習する」のかは、よくわかっていません。最も重要な課題は、長期間の学習や練習が不要で、直感的かつわかりやすいジェスチャーにすることです。たとえばマルチタッチジェスチャーは、ごく基本的なものを除くと、文字どおり誰も使いません。

Project Jacquard(ちなみに、ジャカードは生地の一種)は、ファッション業界を抜本的に変革すべく開発されました。マルチタッチセンサーを洋服の生地に織り込んで、袖や膝をスマートフォンのスクリーン代わりに利用するというアイデアです。

Project Jacquardの開発者が気を配ったのは、センサーの表面だけではありません。センサーをコントローラーに接続するための伝導性の糸に特殊な色を付け、見た目にはそれとわからないようにしました。なので、服のデザインを損ねることはないでしょう。でも、お望みなら糸を見えるようにして、斬新で時代の先を行くハイテクな服を着ていることを、周りの人に気付いてもらうこともできます。

これも重要なポイントですが、センサーを生地に織り込むための技術的な仕組みはすでにあり、製造コストを上げなくても最先端の服を生産することが可能です。必要なのは伝導性の糸だけ。ですから、実用化が100年以上先になるような話ではありません。GoogleはすでにLevi’sと契約を交わしています。サイバージーンズの登場もそれほど先の話ではないことでしょう。

すぐに思いつく用途は(当たり前すぎですが)、タッチスクリーン搭載のガジェットを取り出さなくてもデータを入力できる機能(電話番号のダイヤルなど)や、ゲームコントローラーなど従来の入力手段の代わりになる機能などです。

Project Vaultは、データを不正アクセスから守るための新技術で、指紋スキャンよりもさらに安全性が高いと見られています。究極の目標は、最終的にパスワードをなくすことです。簡単なパスワードは単純で直感的なので覚えやすいのですが、現代のコンピューターにかかれば、ものの数分で破られてしまいます。一方、複雑なパスワード(たとえばXj$7f(sQp]1v^4)は、覚えられないので結局付箋紙か何かにメモすることになり、これではとても安全とは言えません。

Vaultは、microSDカードのフォームファクターに対応した超小型デバイスです。「リアル」のコンピューターやスマートフォンは、搭載のOSにかかわらず、2つのファイル(書き込み用と読み取り用)を持つ取り外し可能なストレージデバイスとしてこのカードを認識します。

といっても、Vaultは単なるメモリカードではありません。小難しい技術の話は置いておきますが、完全に自律した動作が可能で、データの暗号化と復号の機能を備えた「バーチャル」コンピューターなのです。一方、外部のソフトウェアは(どのOS向けのものであれ)チェックサムを実行して、読み込んだファイルと書き込んだファイルが一致していること、および鍵が認証されることを確認します。

この「魔法のようなフラッシュドライブ」さえあれば、どんなデバイスからでも重要なデータにアクセスできます。Vaultは不揮発性メモリ、ARMプロセッサ、NFCモジュール、アンテナを搭載しています。これらはすべて1つのソリューションにまとめられ、LinuxベースのOSであるRTOSによって管理されます。

つまり、パスワードを入力しなくても、このストレージを差し込むだけで、時間と場所を問わず認証が可能になるということです。ちなみに、アイデア自体は特に革新的でもありません。詰まるところ、以前からあるUSBトークンや、その前身で、オンラインバンキングアプリで広く利用されているLPTキーと同じようなものです。こうした従来型ソリューションの難点は、他のデバイスからアクセスできないところです。両方を1台のPCで動作させるには、事前に設定を済ませ、ドライバーをインストールしなければなりませんから。

Google I/Oのデモでは、Project Vaultを使って安全にメッセージが送信される様子が披露されました。1台のスマートフォン上で暗号化されたメッセージが、オープンプロトコルネットワークを経由して送信され、送信先のデバイス上で復号されます。鍵は送信されないので、メッセージを傍受することはできません。

Project Abacusは、ユーザー認証に対するまったく新しいアプローチです。Googleのリサーチャーは、パスワードや2段階認証モデル(これも結局はパスワードなどの認証方式を採用しています)を使うのではなく、ユーザーの移動パターン、話し方、入力の方法などを利用した真の多段階認証を提案しています。こうした要素を組み合わせることで、パスワードよりもはるかに確実に本人を特定できるようになります。

一番の驚きは、専用のハードウェアが不要なことです。動作に必要なものはすべて今どきのスマートフォンに備わっているので、あとはソフトウェアを追加するだけです。しかし、このアプローチでは、利用者の行動に関する情報を大量に収集する必要があります。Googleが現時点で握っているユーザーデータの量を考えると、不安をぬぐい去ることはできません。

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