ジョンとエイミーの物語
主な調査結果
- Kaspersky Labの調査の結果、デジタルプライバシーの境界線があいまいになってきていることが分かりました。恋愛/夫婦関係にある人の約半数が「デバイスにアクセスするためのパスワードやパスコード」をパートナーに教えています。また、26%がパートナーのデバイスに個人的な情報を保管しています。
- 10人に8人は「カップル/夫婦のそれぞれが自分だけのプライベート空間をオンラインでもオフラインでも持つべきだ」と思っていますが、ほぼ同数(10人中7人)が「パートナーとの関係は自身のプライバシー以上に大切だ」と答えています。
- 「パートナーに対しては秘密も、隠し事もない」と答えている人が72%に上る一方で、少なくとも61%が、オンライン活動を含む一部の行動(主に他人に送ったメッセージの内容)をパートナーに知られたくないと認めています。
- パートナーの行動を嗅ぎまわっても、カップル/夫婦間の信頼が深まらないことは明らかです。それにもかかわらず、38%が「パートナーのオンラインでのアクティビティは自分も知るべきだ」と思っており、約3分の1(31%)が「オンラインでのパートナーの動向を追うことがよくある」と認めています。
- 残念ながら、結果として多くの場合で口論となります。33%が「どちらかが、相手が共有したくないと思うものを見た」ために口論になったと答えています。
- プライバシーの欠如は、破局後に不安をもたらします。たとえば、10人に1人(12%)が、交際相手と別れた後で「復讐として相手の個人情報を公開した、または公開したいと思った」と認めています。その傾向は男性に強くみられ、「復讐として相手の個人情報を公開した、または公開したいと思った」と答えたのは女性がわずか7%だったのに対し、男性は17%にのぼりました。
- 別れた後も、回答者の3分の1(31%)がこっそりと「SNSを通して相手を見張っ」ていましたし、「自身がアクセスできる相手のアカウントで相手を見張った」と答えたのは21%に達しました。SNSを通じて監視する傾向は女性の方に強く見られました。
- 一方で男性には、元交際「相手のお金をオンラインで使った」り(男性15%に対し女性6%)、破局後、元交際相手がプライベートなデジタルライフを再構築できないようにするため「相手のデバイスにダメージを与えた」り(男性16%:女性9%)する傾向が見られました。
はじめに
デジタルの世界は、私たちに複数のデジタルスペースをもたらします。私たちはそこでコミュニケーションを図り、おおっぴらに、またはこっそりと、大切なものを共有したり保管したりしています。しかし、かけがえのない人と巡り会ったとき、私たちのプライベートなデジタルライフには何が起こるでしょう?
この「コネクテッドな」(つながった)世界が人々に出会いの機会を与え、意思疎通を助けるなどして人間関係で重要な役割を果たしてきたことは間違いありません。しかし、デジタルライフ同士がぶつかったとき、境界線はあいまいになるのでしょうか?どのくらいの影響があり、私たちのプライバシーにどのような結果をもたらすのでしょうか?
交際を始めた後で、パートナーのスマートフォンに気になるメッセージがときどき表示されることに気付いたとしたら、どうしますか?メッセージが来たことを教えてあげて、自分は読まないようにしますか?パートナーが自分にも読ませてくれるのを期待しますか?それとも、相手が見ていないときにこっそり読みますか?
こっそり読むと答えたあなた、もし、パートナーがあなたに同じことをしたら、どう思いますか?隠すものなどない恋愛/夫婦関係において、そもそもプライバシーは重要なのでしょうか?
こうした問いが現れてからまだ日が浅く、医療ソーシャルワーカーのロバート・ウェイス(Robert Weiss)氏やセキュリティとプライバシーの論客であるジェームス・グラブマン(James Grubman)氏のような心理学者の研究が示すとおり、社会はまだ答えを出せないでいます(リンク先はいずれも英語記事)。デジタルの世界における恋愛/夫婦関係の舵取りには、正しい方法も間違った方法もありません。人それぞれなのです。
ここではジョンとエイミー(いずれも仮名)というカップルの物語をお話しします。彼らは、デジタルの時代にプライバシーの問題に立ち向かう恋人たちにありがちなさまざまなことを経験します…
このレポートは調査結果を基に、ジョンとエイミーの関係を例として現代の恋人や夫婦の多くが直面するプライバシーの問題をいくつか検討していきます。
調査方法
2018年1月、調査会社TolunaおよびKaspersky Lab は、6か月以上交際しているパートナーを持つ、世界18か国の18歳以上の男女18,000名(男性9,000名、女性9,000名)を対象にオンライン調査を実施しました。
データは、各国で一貫したものとなるように重みづけされています。
※このレポートは、『Connected Love: Privacy in Relationships and the Boundaries of Personal Space』の抄訳です。
第1章:ジョンとエイミー、一度のスワイプで出会う
デジタルの世界は、現代の恋人たちの生活で大きな役割を果たしています。多くのカップルはオンラインで初めて出会い、実際に会って、目と目を見つめ合うその前に、インターネット経由で互いの理解を深めます。全体的に見て、現代の恋愛関係の4分の1(25%)は、SNS、インターネットのマッチングサービス、インターネット上のグループやコミュニティなど、オンラインで始まっています。
カップルの年齢が低ければ低いほど、出会いの場がオンラインであった確率が高くなります。カップルがオンラインで出会った割合は、交際/結婚期間が10~19年の場合は17%ですが、5~9年のカップルでは29%に上昇し、1年未満の場合は37%になります。
なぜ人々はオンラインで恋人を見つけることができるのか、その理由はシンプルです。ネット恋愛について当社が以前行った調査(英語)では、インターネット利用者の32%がインターネット上でデートをしていることが明らかになりました。したがって、自分と相性の良い人に出会える確率が高いのです。
そうして出会ったカップルは、インターネットのおかげで、デートとデートの間も互いにつながったままでいられます。メッセージやリンクや通話の共有は、カップルが互いをより深く知るために重要な役割を果たし、2人の化学反応を刺激し、活性化します。ジョンとエイミーの仲を取り持ったのは、確かにインターネットの出会い系サービスでした。では、エイミーの立場から見た2人の初デートの様子を彼女のSNSページで確認してみましょう。
第2章:ジョンとエイミーがジェイミーになる
新しい関係を正式に公表する瞬間は、多くの人にとって、それまでは別々のものだった2つのデジタルライフの境界線があいまいになり始めるときでもあります。先日発表されたMatch.comの統計(英語)では、SNSのステータスが「交際中」に更新されるのは一般的に交際開始から157日目で、これに先立つ144日目(平均)には互いに「愛している」と言っていることが多いと図示されています。
上の例では、おそらくジョンとエイミーが2人の関係について話し合った後に、ジョンがFacebookのステータスを更新したのでしょう。しかし、話し合いをしていなかったら?エイミーはこれを、自分のデジタルライフのプライバシーと世間に対する彼女自身のイメージを侵害する可能性があると見たでしょうか?確かに、回答者の過半数(56%)は「パートナーがオンラインで私の話題や写真/動画を投稿する際は、私の同意を求めるべきだ」と思っています。
ジョンとエイミーがこの関係に達するまでに、どのような話し合いをしてきたか、私たちに知る由はなさそうですが、2人の中が深まったと聞くのはうれしいことです。
交際する中で、互いのデジタルライフの一面を自然と共有するようになったりするものです。共有するのはインターネットバンキングのアカウント情報かもしれませんし、映画やテレビを一緒に見るためのアカウント、または写真その他をシェアするためのアカウント情報かもしれません。
調査では、80%が「カップル/夫婦のそれぞれが自分だけのプライベートスペースをオンラインでもオフラインでも持つべきだと思う」と答えていますが、70%は「パートナーとの関係は自身のプライバシー以上に大切だと思っている」としています。ご覧のとおり、関係が進むにつれ、どこかの時点で、恋人または夫婦という関係が自分自身のプライバシーに対する態度をあいまいなものにし始めるのです。
多くの人が、個人用デバイスへのアクセスも共有しています。当社の調査では、カップルや夫婦の半数が、相手のデバイスのロックを解除するためのパスワードやパスコードを知っていて、デジタルプライバシーの境界線がさらにあいまいになっていることが分かりました。 しかし、プライバシー侵害が始まるのはここからです。中には、無断で相手のパスワードを入手したことを認めている人もおり、3%が「私が知っているということをパートナーは知らない」と答えています。
さらに、「自分とパートナーの個人的な」メッセージや写真、動画などを「パートナーのデバイス上」に保存している回答者は26%に上り、7%が「過去のパートナーからの個人的なメッセージ」を現在の「パートナーと共有しているアカウント/デバイス上」に保存していると答えています。つまり、現在のパートナーが簡単に読める状態になっているのです。
このようなカップルや夫婦は、相手が自分の個人的な保管場所を嗅ぎまわるような人間ではないと信じているのかもしれませんし、隠すものは何もないと思っているかもしれません。もしかすると、予期せぬものの発見で関係に波風が立つ可能性を天に任せているだけなのかもしれません。
第3章:ジョンとエイミーには自分の空間が必要である
隠し事のない関係の中でプライバシーを確保するには、2人の間でうまく折り合いをつける必要があります。ジョンがここで気づき始めたように、カップルや夫婦でも、プライバシーに対する態度はそれぞれ異なります。
悲しいことですが、プライバシーは必ずしも尊重されないというのが現実で、パートナーが相手のデバイスやアカウントのパスワードを手に入れたり、個人的なものを見たりしている、それも無断で…ということもあります。
このような行動は主に、現在の関係に完全には満足していないと認めている人々に見られます。調査では、カップル/夫婦間の満足度を測るため、2人の関係を「素晴らしい関係で幸せだと感じている」または「良好な関係で満足している」(本レポートでは、この2つを「良好な関係」に分類)、「ある程度良い関係だがもっと良くできるはず」または「安定しているとは言えず、今後は未定」(これらは「上手くいっていない関係」に分類)、それからこの質問には答えたくない人向けの「回答したくない」から選んでもらいました。
関係をこのように分類したことで、興味深い結果が得られました。たとえば、「パートナーのオンラインでのアクティビティは自分も知るべきだ」と思っている人は38%、「オンラインでのパートナーの動向を追うことがよくある」と認めている人は31%です。ですから、「パートナーが原因で自身のオンラインでのプライバシーが危険にさらされていると感じて」いる人が20%いても、驚くほどのことではないのかもしれません。しかし、2人の関係が「安定しているとは言えず、今後は未定」と答えた人の間では、この割合が48%に上昇します。プライバシーがカップルや夫婦の関係に緊張をもたらす原因となりうること、特に関係がうまくいっていない場合にはそうであることがよく分かります。
とはいえ、人々が相手のプライバシーを侵害するのは、愛する人の行動を探るためだけではありません。たとえば、パートナーが見られたくないと思っている「メッセージ」(33%)、「ウェブ上のアクティビティ」(31%)、「文書、写真、その他ファイル」(29%)を「(誤って、または故意に)見てしまった」と、多くの回答者が認めています。
加えて、プライバシーが十分でないことで人間関係に摩擦が起きる可能性があります。プライバシー問題が口論の争点になっていることを多くのカップルや夫婦が認め、33%が「どちらかが、相手が共有したくないと思うものを見た」ために口論になったことがあると答えています。
また、このような口論を経験したことがある人の割合は、「悪い関係」に分類された回答者の場合は47%であるのに対し、「良好な関係」の場合は4分の1(27%)にすぎませんでした。さらに、「パートナーが原因で自身のオンラインでのプライバシーが危険にさらされていると感じている」と回答した人の間では、この割合が66%に上昇します。
第4章:エイミーとジョンは「隠し場所」を探す
カップルや夫婦の関係の中で「隠し場所」を探すのは、極めて自然なことに思えるかもしれません。少しばかりのプライバシーを求める場合もあれば、エイミーのように、パートナーのどちらかが誕生日や記念日、婚約、バレンタインデーのサプライズのために何かを計画したり買ったりしようとする場合もあります。
しかし、パートナーに見られたくない(関係を動揺させかねない)ものは、ほかにもあるかもしれません。たとえば昔のパートナーからのメッセージや写真、思い出の品など、どうしても処分できないようなものです。
回答者の大半(72%)は「パートナーに対しては秘密も、隠したい事もない」と答え、81%が「パートナーを信用しており、パートナーのオンラインでのアクティビティについては心配していない」と言っています。確かに、私たちの調査では、幸せなカップルや夫婦の間では透明性が高い傾向が見られます。その証拠に、良好な関係にあると答えた人の87%が「自身のオンラインでのアクティビティを意図的に隠したりしない」とも答えています(これに対し、関係が悪い場合の割合は74%です)。
それでも、プライバシーの境界線をパートナーが越えることを許す姿勢を見せる一方で、ほとんどの回答者が隠し事をしようとしています。少なくとも、自分の活動の中に「パートナーに知ってほしくないこと」があると61%が認めています(できることすべてを選択肢に挙げたわけではないので、実際の数値はもっと大きい可能性があります)。パートナーから隠したいものとして多くあげられたのは、「他人に送ったメッセージの内容」(24%)、「自分の支出額」(23%)「自分の支出内訳」(23%)でした。
第5章:大切な人から有望な人へ – ジョンとエイミーは難局を乗り切れるか?
カップルや夫婦の関係にひびが入ったり、コミュニケーションが途絶えたりするのは、いつも悲しいものです。特にジョンとエイミーの場合、ちょっとした不信感が、ロマンチックなサプライズに水を差してしまったようです。2人が仲直りできることを祈りましょう。
カップルや夫婦が信頼しあっているとき、2人の間の特別な思い出や個人的な記録の保存先としてデバイスを共有するのは実に自然なことです。しかし、上に示したジョンとエイミーの関係のように、2人の間に亀裂が入り出したらどうなるでしょう?
一緒にいて心地よいとは感じられなくなった相手の手元に個人的なデータがあることとなり、プライバシーが危険にさらされる可能性が出てきます。たとえば、10人に1人(12%)が、交際相手と別れた後で「復讐として相手の個人情報を公開した、または公開したいと思った」ことを認めています。その傾向は男性に強くみられ、「復讐として相手の個人情報を公開した、または公開したいと思った」と答えたのは女性がわずか7%だったのに対し、男性は17%に上りました。
回答者の約半数が破局後に元のパートナーの情報をデバイスから削除し、SNSの友達から削除し、2人の写真を削除してオンラインの世界から存在を消しているのは、この信頼の悪用(または、信頼の悪用への不安)が理由の1つと考えることができそうです。
しかし、回答者の3分の1(31%)はこっそりと「SNSを通して相手を見張っ」ていましたし、21%が「自身がアクセスできる相手のアカウントで相手を見張った」と答えています。SNSを通じて監視する傾向は特に女性に強く見られました(男性28%に対し女性は33%)。一方で男性には、元交際「相手のお金をオンラインで使った」り(男性15%に対し女性6%)、破局後に「相手のデバイスにダメージを与え」て(男性16%:女性9%)元交際相手がプライベートなデジタルライフを再構築できないようにする傾向が見られました。
まとめ
ジョンとエイミーが最終的にどうしたのか消息は明らかではありませんが、2人の物語は信頼とプライバシーの重要性、そして、騒々しい「つながった世界」で信頼とプライバシーを確保することの難しさを表しています。
プライバシーの保護は、私たちがKaspersky Labで情熱を傾けているものの一つです。そこで最後に、人間関係にかかわらずプライバシーの保護に役立つヒントをいくつかご紹介します。
- 話し合いましょう!正直に、しかし、相手が一番心地よいと感じられるものが何かを互いに知ることができるように、プライバシーの境界線をしっかりと引きましょう。あなたは互いのすべてを喜んで共有しますか?すばらしい!相手の写真をスクロールする前に、プライバシーについて必ず話し合っておいてください。
- 秘密にしておく必要のある着信やメッセージは隠しておきましょう。パートナーのために記念日のサプライズを計画しているけど、相手には気付かれたくない?カスペルスキー インターネット セキュリティ for Androidのプライバシー保護機能を使えば、他人に見られたくないメッセージや着信を隠すことができます。記念日のサプライズは秘密のままです!
- インターネット広告に秘密をばらされるな!パートナーの誕生日が近づいています。しかし、プレゼントを物色していることを相手に知られたくありません。そんなときは、広告の表示を停止する機能を使って、あなたが何を検索していたかがわからないようにすれば、ギフトラップに包まれたプレゼントの正体を秘密のままにすることができます。Kaspersky LabのWebトラッキング防止はまさにそのための機能です。
- 失敗しないサプライズの計画で永遠の愛を。あなたがどのようなファイルにアクセスしたか、また最近オンラインで何をしているかをパートナーにわからないようにするには、PCの履歴が常に消去されるようにしておくといいでしょう。カスペルスキー インターネット セキュリティ(カスペルスキー セキュリティのWindows対応プログラム)の「プライバシークリーナー」は、履歴を消去するだけなく、システムに残った操作履歴(アプリケーションの起動、さまざまなアプリケーションによるファイルのオープンや保存、一時ファイルなど)を検出して削除するので、パートナーにサプライズを勘付かれることはありません。
- デバイスに強力なパスワードを設定しましょう。デバイスをパートナーと共有するかプライバシーを守りたいかどうかにかかわらず、強固なパスワードの設定は重要です。カスペルスキーのパスワードチェッカーは、強固なパスワードとはどういったものかを体感していただくためのツールです。
ここにあげた製品の詳細について、また、恋愛/夫婦関係にあるかどうかにかかわらずインターネットでのプライバシーを強化する方法については、Kaspersky LabのWebサイトをご参照ください。