スマート社会の落とし穴

2014年12月3日

技術はフルスピードで進化し、日々の生活から切り離せないほど日常的な存在となりました。しかし、画期的な技術が登場しても、以前ほどの驚きや興奮はありません。モバイルネットワークの通信速度が上がっても、誰が喜ぶというわけでもなく、ユーザーから返ってくるのは「もっと速くならないのか」という反応くらいです。

Cyberfuture-pessimistic-view

テレビの最新モデルを見ても、価格や形に驚くことはあっても、驚異的な解像度に驚くことはありません。最近のモバイルデバイスは、火星へ行く宇宙船の飛行経路を計算できるのですが、誰も気にとめません。

Kim Kardashian(キム・カーダシアン)さんのヌード写真流出の話題が、地球から約4億km離れた彗星に探査機が着陸した話題と同じくらい注目されたのは、驚くほどのことではありません。こうした技術の過剰摂取を見て、私はある副作用に気付きました。誰もがセキュリティに対してかなり鈍感になり、技術の進歩につれて5~10年後の日常生活に現実・理論の両面でどれくらいの脅威がもたらされるのか、気にとめなくなっているのです。

興味深いことに、技術やインターネットが高度に発展するほど、私たちの世界は危険にさらされます。実際のところ、私たちの未来にはどのような危険が待ち受けているのでしょうか。いくつか予測を立ててみましょう。

不動産と資産

現在のスマートホームはまだ高価で、一般人には手が出ません。しかし、GoogleやAppleのように世界中で事業を展開するテクノロジーの巨人たちの手にかかれば、わずか数年で私たちのリビングルームは大量のスマートデバイスで溢れかえることになります。どのモバイルデバイスからも空調、照明、ホームセキュリティ、家電を制御できるようになるでしょう。

自動車についても同様です。すでにVolvoやBMWでは、基本的な自動車の制御や監視をスマートフォンやタブレットから行うことができます。数年後には、中間層向けのモデルにもこうした機能が標準搭載されるでしょう。さらに、こうした車載技術のコストは、車両全体のコストとは比較にならないほど低価格です。

技術の進歩にかかわらず、一部システムには南京錠と多くの共通点があります。たとえば、どんなに頑丈でも、あるポイントを一撃すれば簡単に開錠できるという点です。

犯罪者が鍵を持っていれば、あるいは鍵を入手するチャンスさえあれば、事はさらに簡単です。ハッカーはマスターキーに相当するスマートフォンを使い、誰かの自宅や車に(数分とはいかないものの)数時間で簡単に侵入可能です。こうした事実は、最近行われたスマートホームスマートカーのハッキングの実験でも明らかにされています。


同様の実験で、電子化された家や車のハッキングは必ずしも窃盗目的ではないことがわかっています。中央制御システムに侵入した犯罪者は、人間を中に閉じ込める、空調をいじる、飲料水の成分を変える、車のブレーキやステアリング装置を制御するなど、さまざまなことを実行できます。これらはすべて、ボタン、ノブ、装置に直接触れなくても、リモートから操作可能です。

お金

武器に人質、逃走車の要求など、「古典的」な銀行強盗は過去の遺物となりました。彼らに代わって登場したのが、オンラインバンキングシステムオンライン決済のぜい弱性をどう利用すればよいか知っている犯罪者であり、この先いっそう技術に磨きをかけていくでしょう。

買い物は「現金派」という人は、お金が自分のポケットからレジへ収まるまでの様子を目で確認でき、お金を制御できていると感じるはずです。携帯電話でタッチ決済するときも、同様の分かりやすさがあるでしょうか。私はそうは思いません。このケースでは、買う方も売る方も、請求額がいくらで、そのお金がどこに行くのか、100%の確証を持って答えられないでしょう。

Financial #phishing targets in 2013. See the full report on Securelist. Bit.ly/1fROFaE #security

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全体的に現金よりも電子決済システムの利用件数が増えているのは、犯罪者にとって願ってもない傾向です。実際のモノよりもオンライン上の情報の方が、はるかに簡単に操作できます。情報はさまざまな方向に流れていきますが、流れていく情報の実態は、私たちが頑張って稼いだ給料です。私たちはもっとまめにオンライン上の情報を制御しなければならなくなるのではないかと、私は危惧しています。

個人情報

大切な思い出を段ボール箱に詰めてクローゼットに仕舞い、残したい動画やCD、その他もろもろをUSBメモリやハードディスクに保管する時代は終わりました。今は、大量の個人情報をクラウドに保存するインターネットユーザーが増えています。その量は、物理ドライブに保存したデータ量を全部合わせたよりも多い場合がほとんどです。

あと数年もすれば、ローカルストレージは極めて慎重なユーザーだけが使用する過去の遺物になるでしょう。単純な話です。クラウドに保存すれば、世界中どこからでもモバイルデバイスでアクセスできるというのに、メモリ容量に制限のあるウルトラブックにわざわざ保存する理由はないのですから。

ただし、1つ注意が必要です。クラウドにデータ(写真、ドキュメント、動画、その他関連データ)を置いた瞬間、それは自分だけのものではなくなります。その瞬間から、所有権はクラウドストレージ事業者にも適用されます。5年前もそうでしたし、今後もそうでしょう。

後戻りする術はないように思われます。数年後、Googleのような企業は、インターネットにアクセスする何百万もの人々の精巧なデジタル「モデル」を入手できるでしょう。それだけでなく、私たちの健康やライフスタイル、位置情報、趣味趣向に関するデータは、大量の自撮り写真やテキストメッセージと組み合わされていくことでしょう。オシャレな場所でチェックインしたり、常にフィットネスバンドを着用したりしていませんか?していますよね?


私はどうしてもゲーム『ウォッチドッグス』映画『ダイ・ハード4.0』を引用せずにはいられません。両作品では、中央指揮システムで管理された都市、住人、ほぼすべての電子機器へ無制限にアクセスできる人物などの重要な要素が共通して使われています。映画やゲームで起こっていたことは、今や現実となりました。正直なところ、ちょっとゾッとします。


進化し続けるマルウェア、普及し続けるインターネット、完全に無責任で認識の低いユーザーを不安要素に付け加えれば、組織化されたハイテクの未来は、悲惨な未来へと変貌します。それは、ボタン1つで都市全体が混乱に陥り、ほとんどの人は組織に属し、そしてオンラインバンキングシステムのコードにタイプミスがあったせいで、15歳のハッカーが何十億もの大金を奪い取ることができる世界です。

それほど未来は悪くないと思いますか?