「汝が人の舌を引き裂くとき、汝はその者が嘘つきであることを証明しているのではなく、その者の語るであろう言葉を汝が怖れていることを世に知らしめているにすぎない」
– ティリオン・ラニスター(Game of Thronesより。翻訳はKaspersky Lab)
前略
ジャック・ドーシー様、並びにTwitter社幹部の皆様
皆様が最近において、御社のソーシャルメディアプラットフォームの「健全さ」に関する懸念、また、虚報の拡散、社会不和の創出その他に同プラットフォームが利用されかねないとの懸念をお持ちである旨、存じています。安全で友好的なインターネットを長年支持してきた立場として、こうした懸念は私の懸念でもあります。弊社はソーシャルメディアを席巻するこの嵐に関しては周辺的立場にあるものと見ていましたが、それが誤りであったと判明しました。
今年1月末、弊社はTwitter社より、弊社公式アカウントによる広告を禁ずる旨の通告を、思いがけず受領しました。これら公式アカウントは、弊社が所有する各種公式ブログ(Securelist、Kaspersky Dailyほか)の新着記事をご案内し、新たなサイバー脅威についてお知らせすると共に、脅威へどう対応するべきかをお知らせするためのものです。匿名のTwitter社員より届いた短いレターでは、弊社が「Twitter広告の容認可能なビジネス手法に本質的に対立するビジネスモデルを利用して活動している(operates using a business model that inherently conflicts with acceptable Twitter Ads business practices)」と記されていました。
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“Kaspersky LabがTwitter広告の容認可能なビジネス手法に本質的に対立するビジネスモデルを利用して活動しているとの当社判断(OUR DETERMINATION THAT KASPERSKY LAB OPERATES USING A BUSINESS MODEL THAT INHERENTLY CONFLICTS WITH ACCEPTABLE TWITTER ADS BUSINESS PRACTICES)” ※翻訳はKaspersky Lab
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このくだりを何度も読み返しましたが、これが弊社とどう関連するのか、今なお理解することができません。一つ確かに言えるのは、弊社はいかなる書面化されたルール(あるいは書面化されていないルール)にも反したことがないということです。また、弊社のビジネスモデルは、サイバーセキュリティ業界全体で利用されている「我々は製品およびサービスを提供し、利用者はその対価を支払う」という定型モデルと何ら変わるところはありません。レターでは、弊社が違反したという具体的な(あるいは具体的でないにしても何らかの)ルール、標準、またはビジネス活動について言及されていませんでした。個人的には、この禁止措置自体が、Twitter社の標榜する「表現の自由」の原則に反するものと映ります。この点については後に改めて触れたく、まずはその他の部分に目を向けたく思います。
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“当社はまた、人々が当社サイトと関わる際において安心を感じられるようにしたいと考えています(WE ALSO WANT TO ENSURE PEOPLE FEEL SAFE WHEN THEY INTERACT WITH OUR SITE)” ※翻訳はKaspersky Lab
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世界をサイバー脅威から守ることは、弊社の企業ミッションです。それ故、Twitterにて弊社がプロモーションしてきたコンテンツの大半はサイバーセキュリティに重点を置いたものであると見なすのが公正な見方ではないでしょうか。現にそのとおりであり、透明性の高い一企業として、Twitter上で2017年に実施した広告に関する数値をここにご覧に入れたく思います。
このとおり、弊社のTwitterでの弊社広告は全世界で実施した広告費のうち大きな割合を占めるわけではありません。しかし、最も重要なのは、弊社がプロモーションするコンテンツです。
たとえばランサムウェア大流行とそこから身を守る方法に関する内容、子どものサイバーセキュリティに役立つ教師向けの情報、情報セキュリティコストに関するベンチマーク。当然ながら純粋にマーケティング目的のものも含まれますが、そうであってはならない理由があるでしょうか?弊社はサイバー脅威に対抗する術を売る、それだけのことです。Twitter広告の違反などありません。
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“当社はまた、…広告が当社ユーザーにとって価値あるものであることを保証したいと考えます(WE ALSO WANT TO ENSURE THAT…ADVERTISERS BRING VALUE TO OUR USERS)” ※翻訳はKaspersky Lab
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すでに申し上げたとおり、Twitter上における弊社のプロモーションコンテンツは、サイバーセキュリティに関するもの、および情報セキュリティ業界に関連する調査やレポートに関するものが大半を占めています。こうしたコンテンツは、自分自身と家族を守るための簡単なヒントを知りたい一般の人々、そして弊社の最新調査にある技術的詳細に興味を感ずる情報セキュリティのエキスパートなど、幅広いTwitterユーザーにとって価値あるものと信じています。
弊社が人々に情報を提供すること、たとえばサイバー空間のゆすり屋たちから身を守るために重要たり得る情報をタイムリーな形で提供することを、Twitter社が阻害するのであれば、それはサイバー犯罪者の思うつぼです(弊社の一番のプロモツイートは、ランサムウェアのWannaCryが世界的な攻撃を見せた際のものでした)。
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“当社は表現の自由と、権力に対する真実の表明を信じるものです(WE BELIEVE IN FREEDOM OF EXPRESSION AND SPEAKING TRUTH TO POWER)” ※翻訳はKaspersky Lab
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弊社も同様です!もしかすると、我々は何か見落としているのでしょうか?Kaspersky Labにおいては、規則を遵守(言うまでもなく法律も遵守)するのみならず、不可解な問題に関しては、それがいかなるものであろうと、真実を突き止めようとしてきました。それ故、御社の複数オフィス宛に公式にレターを提出した次第です。
以来2か月以上が経過しましたが、弊社が受け取ったのは以前と同一のテンプレート的文章のみでした。こうして、私はTwitter社のもう一つの(よりはっきりと、やはりしばしば声高に宣言されている)原則、すなわち「Speaking Truth to Power(権力に対する真実の表明)」を頼りに、関心のある人々へこの問題の詳細を共有し、公に御社へ問いかけるほかなくなりました。Twitter幹部の皆様には、今回の禁止措置を裏付ける具体的理由を明らかにし、広告機能の停止という決断に至った理由を十分に説明し、他のサイバーセキュリティ企業が同様の状況を避けるために何をすべきか明示していただきたく思います。なお、以上を合理的な期間内に実施していただければ幸甚です。
御社が公衆的および政治的圧力への対応に多忙であることは承知しています。このような圧力への回答として、ソーシャルメディアプラットフォーム(特にTwitter)としては、自社のルールやポリシーを何らかの形で順応させねばなりません。しかし、既存の課題に対応して御社が採用する変更は、いかなるものであろうと、十分に明らかにされること、透明性のある方法で適用されることが最重要であると考えます。
どうかお怒りにならないでください。Twitter社が熱心な取り組みを続けており、正しい方向へと向かいつつあるのは存じています。私はTwitter社のAdvertising Transparency Centerのコンセプトを大変好ましく感じていますが、その理由については推察いただけるものと思います。実際、透明性を保つことは、この荒波のような時勢において、必須でありかつ奨励されるべきものであると私は信じています。弊社について述べるならば、サイバーセキュリティ業界でKaspersky Lab以上に透明性が高い企業を探し出すことの難しさを、御社はお感じになることでしょう。
万一、これが手違いによる決定であったとしたら、どうか公に認めていただきたいと願います。誰でも過ちを犯すものであり、謝罪は受け入れられることでしょう。政治的圧力がかかったのではないかという疑惑を払拭するには、これが礼儀にかなった唯一の方法であると考えます。
この文章を読まれた方の中には、なぜ我々がこうした問題を公にするのかと思われる方もあるでしょう。以下に理由を述べます。
- 前例を作りたいのです。Twitterの例に、他のプラットフォームも続く可能性があります。弊社側の視点に立つと、その他の、政治に無関心なITセキュリティ企業が、米国の特定の情報発信の中で、同様の根拠なき誤った糾弾の標的となるかもしれません。地政学的なノイズに応じ、裏付けのない誤った主張に基づいてプロモーションを拒み始めるとき、御社は自社の利益を追求するのとは逆に、ご自分の脚を撃っているのです(倫理的ビジネスを展開するクライアントからお金を受け取らないという状況を、これ以外どう説明したらよいのでしょうか)。
- 原理原則です。不正を目にしたとき、我々は戦います。我々はもはや、ゴリアテに立ち向かうダビデではありません。我々は対決し、強力な特許トロールを打ち負かします。我々は独占的行為に立ち向かい、勝利します。我々はメディアが報じる弊社にまつわる虚偽の不公平さと戦います。恐ろしいまでに大きな困難、平坦でないフィールドは、Kaspersky Labの日常業務の中にあります。
万一サイバーセキュリティ以上のものがあるならば、弾圧と同種の正当ならぬ行為に対しても立ち向かわねばなりません。故に、そうするのです。
もし、弊社がこうした行動を起こすのが広告機能を取り戻したいがためだとお考えであれば、それは誤りです。求めるところへ情報を伝える方法は、他にいくらでもあります。そこで、次のように考えています。
この状況がいかなる進展を見せようと、今年度においてはTwitterでの広告を実施しません。Twitter広告のために計上していた2018年予算はすべて、電子フロンティア財団(Electronic Frontier Foundation:EFF)に寄付します。彼らはオンラインにおける弾圧に対抗するため、多くを為すでしょう。
草々
追伸:最悪の部類のウイルスは、虚偽です。虚偽に対する唯一の対抗手段は、批判的に考える能力を維持することです。良識は死んではいません。しばし休息期間にあるかのように見えるだけです。