徹底解説:Chromeの組み込み広告ブロック機能

Google Chromeに広告ブロック機能が搭載されました。どんな広告がブロックの対象なのでしょうか?どのような影響があるのでしょう?

インターネット広告を喜ぶ人は、まず、いません。当然と言えば当然です。面白い記事を夢中で読んでいるときに突然安っぽい画像が出てきて画面を半分隠すとか、スクロールしなければ見えないほど下の方にある動画がいきなり大音量で自動再生するなど、迷惑どころではありません。広告ブロッカーというものが現れてから久しく、しかも一般的に使われるようになっているのも、無理のない話です。2017年にロイターが実施した調査では、インターネット利用者のほぼ4人に1人(英語)が広告ブロッカーをインストールしていることが分かりました。

広告のブロック技術は、このたびさらに一歩前進しました。Google Chromeが、広告を自動的にブロックする機能(英語記事)を搭載し始めたのです(まずは北米と欧州から開始)。すべての広告をブロックするわけではありませんが。

どんな広告をブロックするのか?広告はすべて等しく悪いものなのか?探ってみましょう。

そもそも広告ブロッカーとは?

広告ブロッカーとは、一般的に、広告が表示されないようにするブラウザーの拡張機能を指します。今どきの広告ブロッカーは、広告サーバーが利用者の閲覧しているページへ広告をダウンロードするのを阻止します。

Google Chromeの組み込み広告ブロッカーは何が違う?

Chromeに組み込まれた広告ブロッカーは、典型的な広告ブロック拡張機能とは違って、広告のすべてが悪いわけではないという前提で動作します。たとえば、強制的に見せられる広告ではなく、自分が欲しいと思うディスカウントやソリューションを提案する広告なら、人々は喜んで見るでしょうし、広告主も望む人に見てもらいたいでしょう。Chrome側も、すべての広告が一様に目障りなわけではないことを承知しています。さらに、Webサイトの大半は、広告で生計を立てています。したがって、Googleがブロックするのは、あまりにもしつこく表示される広告だけです。

「あまりにもしつこい」の基準は?何をブロックするかは、どうやって決めている?

Chromeの広告ブロッカーは、オンライン広告の改善を目指す団体「Coalition for Better Ads」(英語)が策定したガイドラインに基づいて、ブロックする広告としない広告を決定します。ただし、ガイドラインに抵触するWebサイト広告が1つでもあれば、Chromeはその広告1つだけではなく、同じWebサイト上にあるすべての広告をブロックします。

とはいえ、Googleは最終的な判断を利用者に委ねています。広告のブロックを促すメッセージが表示されるとき、ブロックしないという選択肢もメッセージの中に提示されます。

「Coalition for Better Ads」とは?

Coalition for Better Ads(CBA)は、名前が示すとおり、広告の改善を目指して広告主、業界団体、パブリッシャー、大企業が2016年9月に結成した連盟です。Google、Facebook、Microsoft、Reuters、The Washington Post、Procter & Gamble、Unileverなどの大企業も参加しています。

CBAの目標は、悪質な広告を減らすことで、ガイドラインを順守している広告主の広告がより多くアクセスされるようにすることを目標としています。Googleの広告およびコマース担当上級副社長を務めるスリダー・ラマスワミー(Sridhar Ramaswamy)氏が説明するように(英語記事)、目障りなバナーがたった1つあるだけで、利用者がすべての広告をブロックしてしまいかねません。結果として企業は顧客にメッセージを届けることが難しくなり、収入源を失ったWebサイト運営は適切なコンテンツの作成をやめてしまいます。

Coalition for Better Adsは何をする?

CBAはまず、北米と欧州に住むインターネット利用者25,000名を対象に調査を実施し、人々がオンライン広告に関して一番迷惑に思っていることを調査しました。また、広告のサイズ、読み込み時間、Webサイト操作への影響など、細かいながら重要な点についても検討しました。この調査結果を基に、CBAは広告ガイドラインを策定しました。

CBAが利他的な人類愛ではなく、メンバーの金銭的損失を理由に行動しているのは事実です。しかしCBAは、広告ブロッカーにむやみと突きかかるのではなく、問題の根本原因を調査し、まずは自らの広告運営のあり方を見直すところからスタートしました。

CBAのガイドラインとは?

CBAの最初の草案(英語)では、消費者に一番嫌がられ、すべての広告を画面から消し去りたい衝動を呼び起こすタイプの広告を、リストアップしています。以下はデスクトップコンピューターの場合です。

  • ページの読み込み中に現れるポップアップ広告。画面の全体を埋め尽くすもの、部分的に埋め尽くすもの(とはいってもページコンテンツがほんの少し見える程度)があります。
  • 音の出る自動再生動画。見た人がびっくりして、何も読まずに慌ててタブを閉じてしまうような広告です。
  • 閉じることができないカウントダウンタイマー付きの広告。
  • いくらスクロールしても、ページの一番下にくっついて離れない広告(特に画面の30%以上を占めるもの)。

モバイルデバイスの場合は、リスト項目の数が2倍です。かなりスクロールしなければ消えないもの、表示されるまで時間がかかるポップアップ、画面の30%以上を隠してしまうものなど、画面を覆うタイプの広告すべてが含まれています。モバイルデバイス向けにしか登場しないタイプは、見ている人の気が散るような、テキストや背景色がチカチカと変化するフラッシュアニメの広告です。ただし、スマートフォン利用者は画面の下に固定されている広告をそれほど不快に思わないため、ガイドラインでは禁止されていません。

Googleは違反広告をどのように判断する?

Googleは、Webサイトがガイドラインに適合しているかどうかを審査します。問題がなければChromeでの広告表示を許可し、問題があれば、問題解決の期間として30日間の猶予をサイト管理者に与えます。管理者がGoogleの通告を無視した場合、そのサイトはChromeで広告を表示できなくなりますが、管理者は問題を解決してから再審査をリクエストできます。この審査に合格すれば、そのサイトは再び広告収入を得られるようになります。

悪い広告はなくなったが、監視は続く…

こうして利用者は不快ではない広告を目にするようになり、サイト所有者には利益がもたらされます。終わりよければすべてよし。…残念ながら、話はこれで終わりません。Googleをはじめとする企業は、押しつけがましいバナーや動画から利用者を守る一方で、引き続き(あまり目立たずに、しかし実は公然と)、利用者の行動すべてを監視しているのです。プライバシーの侵害がフラッシュバナー広告と同じくらい気に障る方には、トラッキング防止機能を持つツールの利用をお勧めします。カスペルスキー インターネット セキュリティカスペルスキー セキュリティのWindows対応プログラム)には、Webトラッキング防止機能が搭載されています。

世の中に存在するブラウザーは、Chromeだけではありません。その他のブラウザーには、広告ブロッカーはまだ組み込まれていません。カスペルスキー インターネット セキュリティのバナー広告対策機能は、広告ブロッカーの役目を果たします。

ヒント