スマートホームは私たちの生活をどう変えつつあるか

家電その他の身近なデバイスのデジタル化が進み、スマートホームが普及しつつあります。それによってどんな変化が?

スマートホームのテクノロジーは、新しいものでも驚くべきものではなくなりました。「スマート家電」や「スマートスイッチ」という概念は、もはやサイバーパンクのワンシーンではなく、具現化しつつある現実です。Berg Insight社のレポートでは、欧州と北米におけるスマートホームの数が2020年に1億260万件に達したことが明らかになっています(英語記事)。

かつては個別のデバイスの集まりだったスマートホームは、時間どおりにコーヒーを供給したり、温度を調整したり、留守中の家の安全を見守ったりすることのできる、本格的なスマートシステムへと変貌しつつあります。これはすべて、家電などのデバイスのデジタル化がもたらしたものです。そこで今回は、現代のスマートホームが私たちの生活にもたらすメリットを挙げていきたいと思います。

安全性

スマートホームのテクノロジーは、家の安全性を引き上げます。警報システムだけの話ではありません。最新のカメラ、モーションセンサー、さらにスマートドアロックがあれば、自宅のセキュリティは要塞レベルにもなりますし、何かあればすぐにスマートフォンへ通知が送られてきます。

一番分かりやすい例は、インターネット接続した家庭用ビデオ監視システムです。監視カメラが24時間休みなく稼働し、家の中のどこで何が起きているかはスマートフォンのアプリで見ることができます。これがモーションセンサー付きカメラだった場合、何か動くもの(猫、犬、侵入者など)を捉えると、録画してサーバーに送信します。通知がスマートフォンに届くので早急に対応が可能となり、家への侵入を未然に防ぐことができるかもしれません。

スマートホームでは、ドアロックも進化しています。自宅の安全を保つ一番単純な方法は、侵入者がドアを開けられないようにすることですが、最新のドアロックはもはや機械的構造の域を超え、侵入者を防ぐ以上のことが可能となっています。例えば、誰かが出入りしたときに家主へ知らせる、家の住人や家の中で働く人(ハウスキーパー、庭師など)のためにアクセスコードを作成するなどです。

こうしたスマート防犯システムにも、保護が必要です。そこで、個々のデバイスをハッキングから守るだけでなく、IoTのエコシステム全体を保護するソリューションが開発されています

安心感

家のことに関しては、小さな心配事がいつでも沢山あるものです。アイロンのスイッチを切っただろうか、ドアにちゃんと鍵を掛けただろうか、自分の旅行中は誰が植木に水をやってくれるのか…。気になることが一つあるだけでも、外食のひとときや小旅行を台無しにするのに十分です。

そんなとき、スマートデバイスがあれば安心です。例えば、水に触れると反応するスマート水漏れセンサーを水回りに設置しておけば、心にゆとりが生まれます。こういったセンサーは、水位を監視するだけでなく、部屋の湿度レベルを判断することもできるので、突然の雨漏りもすぐに知ることができます。

同じように、スマート煙探知機も、手遅れになる前に危険を知らせてくれます。家の中で突然配線が火花を散らしたりすると、センサーがすぐに反応します。

スマートソケットも、重要な役割を果たします。例えば、慌てていてアイロンの電源を切り忘れたような場合に警告してくれます。スマートフォンに通知が表示されたら、どこにいても遠隔操作で機器を電源から切り離すことができます。

快適性

家事の一部をテクノロジーに任せて、心からリラックスできる時代がやってきました。家具を自動化することで、快適性と健康管理を新たなレベルに引き上げることができます。

例えばEight Sleep社が開発したベッドは、レム睡眠とノンレム睡眠の継続時間、心拍数など、15のパラメーターに基づいて睡眠の質をモニタリングするセンサーを搭載しています(英語サイト)。これによって、就寝と起床の最適な時間を選ぶことができます。

スマートベッドは、体が起きる準備ができた瞬間をキャッチして優しく起こします。また、音声コマンドを通じて、穏やかな音楽を流す、軽い振動を起こす、照明をつける、コーヒーメーカーを起動するなどして、快適な朝の環境を作ります。

このほか、料理をより簡単に、楽しめるものにすることも可能です。例えばEYWA Kitchen Smart Screen(英語サイト)は、普通の壁面収納の扉ほどの大きさのパネルで、以下のことが可能です。

⦁ オンラインで料理のレシピを検索する。

⦁ 必要な材料のリストを作成する。

⦁ 必要な材料を自分でオンライン購入する。

⦁ 指定の時間に配達を依頼する。

⦁ 家電製品の電源を入れ、タイマーを設定する。

⦁ アニメで子どもの気を引く。

日常の行動(料理、買い物、コンテンツの選択など)に組み入られたスマートソリューションを安全に使用するためには、デバイス自体の安全性を確保しなくてはなりません。便利なスマート家電を通じて誰かがホームネットワークへ侵入し、個人情報にアクセスする可能性があるためです。

まずは、デバイスの既定のパスワードを、もっと複雑なパスワードに変更するところから始めましょう。ただし、別のアカウントで使っているパスワードは使わないでください。家にたくさんのデバイスがあってパスワードを覚えきれない場合は、パスワード管理機能を持つソリューションでスマートホームのエコシステムを保護しましょう。パスワードを安全に保管できるだけでなく、パスワードが破られている場合には警告を受け取ることができます。

ペットヘルパーとしてのスマートホーム

IoTの市場は、住む人の安全性と快適性だけでなく、ペットの生活の向上も目指しています。調査によると、米国のペットテック市場(スマート機能付きの首輪、ドア、フィーダー、フェンス、おもちゃなど)の規模は55億ドルにも達します(英語記事)。

最も人気のあるペット用スマートデバイスは、飲水用デバイスやフィーダーです。栄養管理や食べ過ぎ防止に役立つのはもちろん、ペットがお腹を空かせているのではないか、水の入ったボウルをひっくり返していないか、といった外出時の不安を取り除いてくれます。

スタートアップ企業のFluentPet社は、人間と犬がコミュニケーションをとるためのデバイスを開発しました(英語記事)。これは、さまざまな記号の付いたボタンを備えたパネル状のデバイスです。動物は絵をクリックすることで自分の感情や欲求を表現できるという仮説を、同社は検証しようとしています。

ペットの快適性を高めるために設計された、スマートアニマルハウスもあります(英語記事)。インテリジェントな温度制御センサーと環境センサーを備えており、外気温に応じて室内の温度を調節します。さらに、ペットの健康状態をモニタリングし、ペットの活動や睡眠のデータを追跡・記録することもできます。こうした情報はスマートフォンのアプリから読み取れるので、ペットの健康状態をタイムリーに把握できます。

エコな暮らし

スマートホームテクノロジーは、より合理的な方法で水や電気を使用するなど、資源を「スマートに」使用することで、私たちの生活をもっと環境に優しいものにします。

例えば、部屋に人がいるかいないかをセンサーで感じ取り、照明をオン・オフすることができます。また、微気候設定を部屋ごとに維持できる、スマートヒーティングというものもあります。例えば、家族全員が学校や職場に出かける朝にはエネルギー消費を抑え、皆が戻ってくる夕方以降にエネルギー消費を増やすなどです。

最新のスマートホームは、エネルギー消費のコントロールだけでなく、エネルギーの生産も可能です。そのようなスマートホームシステムには、ソーラーパネル、風力発電機、地熱発電機など、代替エネルギーを生産するシステムが組み込まれています。

また、建物の立地条件によっては、海流や潮汐などの水のエネルギーを利用することもできます。これにより、スマートホームのコントロールセンターは、エネルギー消費をコントロールするだけでなく、エネルギーの生産や合理的な分配をモニタリングすることができます。

最近のスマートハウスには、省エネ技術が搭載されています。熱の漏れやCO2の排出も、最小限に抑えられています。スマート機能を持つ壁や屋根などの建築部位は、湿気や熱漏れなどの問題を知らせてくれるので、発生した不具合を速やかに修正することができます。

全般的に見てスマートデバイスの市場は活発に成長しており、スマートシステムのメーカーは、家を構成するもっと多くの要素をデジタル化しようとしています。こうした動きは安全性と快適性を向上させるだけでなく、環境面でも恩恵をもたらします。スマートホームは、単純な個々のデバイスの集まりから真の多層デジタルエコシステムへと変化しつつあり、これに伴って適切なレベルの保護も必要とされています。

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