イタリアのマラネッロにあるフェラーリの工場は、最新のテクノロジーと、何百年にもわたって培われた職人技が、絶妙な形で融合しています。この厳重に警備された製造施設では、写真や動画の撮影もラップトップの持ち込みも禁止ですが、運よく立ち入りを許可されたならば、まさに驚きの連続です。精密な作業を要求される組み立てライン、スクーデリア・フェラーリ専用の静かな施設。光り輝くフェラーリ458の新車と、個性あふれる歴代の名車の数々。広く明るい作業場、最先端の風洞。
そうはいっても、フェラーリ車は何よりもまず人の手によって作られており、作業者1人1人が自分の仕事に責任を持っています。2013年秋、私たちはコンピューター、現代技術全般、そしてサイバーセキュリティの問題がこの世界最高のスポーツカーメーカーに与えうる影響を調べるため、フェラーリの工場を訪れました。そのときの印象をお伝えします。
人とコンピューター
Kaspersky LabのようなIT専門の会社で働いていると、ものの見え方が違ってきます。ホテルに行くと、Windows XPが搭載された危険なコンピューターを使っている宿泊客が目につきますし、レストランでは「ここにあるモバイルデバイスのうち何台が公共Wi-Fiに接続しているのだろう」と考えます。人々の働き方、コミュニケーションの取り方、新たな友との出会いや旅行の仕方にテクノロジーがどう影響し、どんな変化を起こすのかに目を向けます。もちろん、フェラーリの製造施設を見学するときは、コンピューターを探します。
フェラーリの製造施設を見学したときコンピューターを探したが、最初は1台も見つからなかった
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最初のうちは1台も見当たりません。さまざまな仕事をこなす作業員たちの姿が見えますが、皆、めったに来ない見学者に目もくれず、忙しく働いています。単純そうな作業(実際は違います)をしている人もいれば、複雑な作業を1日中、次から次にこなしている人もいます。皆さんの中に、フェラーリのV8モデルを所有している人はいるでしょうか?あなたの車のエンジンは、ほかでもないこの工場の作業員によって組み立てられたはずです。
施設を回るうちに、だんだん細かい部分が見えてきます。コンピューター制御のロボットが液体窒素を処理しています。これは自動化を必要とする緻密な作業です。また、さまざまなモジュールを車体に取り付ける作業の順番とタイミングを、コンピューターが制御しています。さらに詳しく見ていくと、自動車製造の一部の工程が完全にデジタル化されていることに気付くでしょう。もちろん、デザインの段階からデジタル化されているのです。フェラーリのITセキュリティパートナーに選ばれたKaspersky Labからも、多くの社員がプロジェクトに参加しました。しかし、未来のフェラーリ車を考案するトップシークレットの部屋を見ることが許されたのは、ほんの一握りの人間でした。
アナログ作業の最終ライン
マラネッロ工場の特別な場所といえば、往年のフェラーリ車の保守、修理、復元を行う部門であるフェラーリ・クラシケもその1つです。この作業区域の隣には巨大な文書保管庫があり、これまでに製造されたフェラーリ製スポーツカー、そのバリエーション、ワンオフモデルの設計図と関連文書が収められています。1960年代の名車の一部分を復元する必要がある場合は、元のプロジェクトに忠実に作業が行われます。昔ながらのエンジニアリングが残っているのは、フェラーリではもうここだけではないでしょうか。といっても、この保管庫はデジタル化が予定されているので、こうした作業はいずれ姿を消すことになるかもしれませんが。
最新技術をいち早く導入:トレンドの先を行く #フェラーリ
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優れた技術を早期に導入
数時間に及ぶフェラーリ社員たちとのインタビューで、私が特に心を動かされたのは、新しい技術に対する彼らの姿勢でした。フェラーリが仮想化などの最新技術を導入したのは、こうした技術が大きなトレンドになるずっと前からです。常に先を行く。これこそまさに、企業が競争力を維持するために必要なことです。スポーツカーの設計やエンジニアリングに限った話ではありません。
ITインフラストラクチャのパフォーマンス、信頼性、可用性もそうですし、セキュリティについても同じことが言えます。次回の記事はフェラーリのITについて取り上げ、ITインフラの保護というテーマを掘り下げるとともに、フェラーリがカスペルスキー製品によってサイバーセキュリティの問題にどう対処しているのか詳しく紹介します。