これまで自宅のWi-Fiの品質に問題を感じたことはなかったけれど、今は違う。そう感じるのはあなただけではありません。外出が規制される中、あらゆるものが一気にオンラインへシフトしました。しかも、仕事・家庭・通勤の空間的広がりでオンライン化したのではなく、1本の回線に頼る1つの家の中に凝縮された形で。このように負荷が増大した結果、問題が明らかになってきました。
たとえば、こんな状況が考えられます—子どもの1人が友達とのZoom会議でメイクアップ技術を勉強中、もう1人の子どもが世界を守るため殺人ゾンビ軍団と戦闘中、パートナーがキッチンでSkypeの外国語講座を受講中、飼い猫がトイレを占領中(とりあえずオフラインモードで)、あなたが仕事場に使えるのはWi-Fiの電波が非常に不安定な寝室しかない。この問題を解決する方法はいくつかありますが、解決に臨む前に、修正すべき点を正確に把握するところから始めましょう。
0. 問題は何か?
まずは、問題の具体的な原因を特定する必要があります。調子が悪いのは、本当にWi-Fiの信号なのでしょうか?別の原因があるのではないでしょうか、たとえばISPの接続速度が遅いのでは?
そこで、Speedtest.netやnPerf.comなどを使って回線速度をチェックしてみましょう。ルーター(Wi-Fiを使うために必須の機器)の近くではデータ転送率が高いのに寝室ではまったくだめな場合には、問題はISP側ではなく自分の側にあります。別の角度から見てみましょう。ということで、Wi-Fiネットワークを分析します。
Wi-Fiネットワークの信号強度をチェックするアプリは、モバイル向け、デスクトップ向けに多数あります。インターネット上で、または公式アプリストアで「wifi アナライザー」のキーワードで検索してみると、さまざまなアプリがヒットします。家のいろいろなところで測定した結果を、比較しやすく視覚化してくれるものを選びましょう。また、アプリをインストールするときには、普段アプリをインストールするときと同じように、まずそのアプリがアドレス帳やメッセージへのアクセス(Wi-Fi強度のチェックには明らかに不要な権限です)を要求してこないことを確認し、次にセキュリティ製品でスキャンしましょう。
Wi-Fi分析アプリを走らせた結果、寝室では隣家のWi-Fiが強くて自宅のWi-Fiが弱かったなら、自宅のWi-Fiがちゃんと仕事をしていないということです。では、いよいよWi-Fiの問題の解決に取りかかりましょう。
1. 活を入れてみる
ものが動かないときはたたいてみろ、と昔はよく言ったものですが、この手の方法がワイヤレスネットワークによく効くことがあります。ルーターをひっぱたけという話ではなく、物理的な面を検討してみよう、という意味です。Wi-Fiがうまく働かないのは、家の間取りとルーターの電波の飛ぶ方向に基本的な問題があるのかもしれません。
そこで、ルーターの置き場所やアンテナの角度を変えて、電波の届く範囲を改善してみましょう。この方法には、余計な時間も、お金も、専門的なノウハウも必要ありません。
たとえば、ルーターが家の奥まった場所や戸棚(特に、金属製のもの)の中に置かれている場合は、別のところへ移動してみましょう。金属とWi-Fiの相性は良くありません。鉄筋コンクリートについても同様です。
ルーターのアンテナの向きも大きく影響します。そのあたりの原理については「ルーター アンテナの向き」で検索してみてください。実際面の話をすると、ルーターのアンテナをまっすぐ上に向けて立てるのがベストである場合がほとんどです。こうすることで、Wi-Fiルーターは、水平方向にできるだけ遠くまで電波を届かせることができるようになります。
また、電波の干渉を起こすような障害物が途中にないかどうかも確認してください。たとえば冷蔵庫は電波の敵です。ただ、簡単には動かせません。一方、電子レンジやベビーモニターはルーターと同じ2.4GHzで動作して電波の干渉を引き起こす場合がありますが、こちらは比較的簡単に移動できます。
それでも問題が解決されない場合は、さらに抜本的な対策に進みましょう。
2. チャネルを構成する
Wi-Fiは、電波スペクトルの狭帯域(いわゆる「チャネル」)で動作します。チャネルの利用を希望するデバイスの数が多くても、使用できるチャネルの数には限りがあります。したがって、最も人気のある帯域(2.4-GHz)は隣り合うネットワークやほかのデバイスからのノイズで詰まってしまうことがあります。
ルーターはリブートのたびに、または予定された時刻に、最も干渉の少ないチャネルを選択します。ちょうど、カーナビが一番渋滞の少ないルートを選ぶようなものです。
通常、ルーターは自力でこのタスクをこなしますが、介入することもできます。たとえば、一番混んでいないチャネルを自動検索する頻度を上げることもできますし、チャネルを手動で設定することも可能です。ただし、手動設定する場合は注意が必要です。自宅のルーターだけでなく近隣のルーターもしょっちゅう自動的にチャネルを切り替えているので、チャネルの混み具合はよく変動します。
また、利用者側でWi-Fiの信号強度を変更できるルーターもあります。強度の設定がどうなっているか、ルーターの設定を確認してみて、強度が最高に設定されていなかったら、上げてしまいましょう。
3. 5GHz帯へ移動する
5GHz帯は、より広く、より多数のチャネルが存在する電波スペクトル領域です。古い機種のルーターや安価なルーターが5GHzに対応していないというのも、この帯域にノイズが少なくて情報の転送率が高い大きな理由となっています。
いま使っているルーターが5GHz帯に対応していない場合は、Wi-Fi規格802.11ac(Wi-Fi 5)に対応している新しい機種にアップグレードするとよいでしょう。安い機種なら5,000円前後くらいからあります。
現時点では、さらにその上の、まだ価格がこなれていない802.11ax(Wi-Fi 6)に変える必要はありません。Wi-Fi 6へのアップグレードが目に見えて影響するのは、トラフィックを大量に消費するWi-Fiデバイスを自宅で何台も使っている場合くらいのものです。
ただし、5GHzへの切り替えは特効薬ではありません。高い周波数には、距離が長くなるほど信号が弱まるという欠点がありますから、広いマンションや家では期待するほど電波が届かない可能性があります。
どれを選ぶかは、自分の使っているWi-Fiネットワークで起きている問題次第です。自宅の2.4GHz帯が隣人宅のネットワークと干渉し合っていて、5GHzを利用できる状況なのであれば、5GHzに切り替えることで問題解決できることでしょう。ルーターと寝室が遠く離れていて、その間に鉄筋コンクリートの壁がいくつもあるせいで2.4GHzネットワークが届かない場合には、おそらく5GHzでも無理だと考えられます。
4. ケーブルを使う
私たちはWi-Fiの便利さに慣れすぎていて、古き良き有線イーサネットのことを忘れがちです。解決のめどが立たないように思えるWi-Fiの問題も、ケーブルを使った接続が一番簡単で安あがりな解決策だったりすることがよくあります。
有線接続の使用は一石二鳥です。まず、Wi-Fiをかたくなに拒み続ける部屋の問題を解決できます。また、少なくとも、いくつかのデバイスをケーブル接続に移すことで、残りのデバイスのワイヤレス接続の質が向上する可能性があります。もちろん、スマートフォンやタブレットはケーブル接続できませんが、デスクトップPCやスマートTVは有線接続でまったく問題ありません。
家じゅうに引き回されたケーブルが目障りな場合は、家の電気配線を通じてネットワーク信号を送るPLCアダプターを試してみてください。PLC機器は予測不能なところがあり、屋内の電気ケーブルと共存できない場合があるという欠点がありますが、一つの選択肢として考えて損はありません。
5. メッシュWi-Fiを構築する
受信可能範囲の品質を向上させる方法は、ほかにもたくさんあります。たとえば、信号リピーターを設置する方法や、ルーターのアンテナをより効率の良いものに交換する方法があります。
しかし、「デシベル」が何なのかわからない、ネットワークデバイスの管理は趣味ではないという人向けには、既製のメッシュWi-Fiキットが最適かもしれません。
メッシュWi-Fiは、大手ネットワーク機器メーカーの多くから出ています。中央のルーターと複数の補助的アクセスポイントで構成されており、家やマンションの最も遠い場所まで信号が届くようにアクセスポイントを配置します。アクセスポイントの数を増やすことで、Wi-Fiネットワークの受信可能範囲を好きな広さに設定できます。
リピーターを使用する従来のやり方とは異なり、このシステムは中央で一括管理されるので、手間と時間を節約できます(補助デバイスは通常、自動的に構成されます)。アクセスポイントをイーサネット経由でルーターに接続できれば、速度も受信可能範囲も向上させることができます。イーサネット接続ができなくても心配しないでください。柔軟さがメッシュシステムの取り柄です。
もう1つ重要な特徴が、高速でシームレスなローミングです。つまり、同僚とビデオ通話している最中に寝室から追い出されても、別のアクセスポイントでカバーされている場所へ行けば、通話が途切れることはありません。
スマートフォンやコンピューターで高品質なローミングを行うには、802.11k、802.11r、802.11vに対応している必要があります。ありがたいことに、今ではこれらに対応した機器が一般的に利用可能となっています。たとえばAppleのモバイルデバイスの場合、iPhone 6s以降ではこの3規格すべてに対応しています。
ではここで、設定についてのヒントを少しばかり。適切にローミングされるようにするには、2.4GHzネットワークと5GHzネットワークで同じネットワーク名とパスワードを使用する必要があります。モビリティドメインIDとキーについては、深く気にする必要はありません。これらはネットワークセグメントを結びつけるための、単なるラベルです(これらを自動的に設定するルーターもあります)。
メッシュネットワークの場合、当然ながら追加コストがかかりますが、大金を払って最上位機種のキットを購入する必要はありません。メッシュ機能を標準搭載したルーターを市販しているメーカーもありますので、必要なときに、低価格の補助ポイントを買い足せばいいのです。もしかしたら、1つ買えば十分かもしれません。
さまざまなメーカーのメッシュ機器を寄せ集めて使うことはお勧めしません。将来的にネットワークを拡張する可能性を考えたシステム構成を検討してみてください。
Wi-Fiがあなたと共にありますように!