当ブログで欧州刑事警察機構(ユーロポール)、オランダ警察、Intel Security、Kaspersky Labの共同イニシアチブとして始まった「No More Ransom」プロジェクトについてご紹介したのは、2か月ほど前のことでした。その当時ですでに、このプロジェクトの規模は拡大していました。記事公開の時点で、新規参加国は13か国を数え、身代金を支払うことなくこのプロジェクトを通じてランサムウェアに暗号化されたデータを復号できた人は2,500人を超えていました。
誰か1人のデータ復旧を手助けできるだけでもやりがいのある仕事ですが、2,500人ともなると、私たちは進むべき道を進んできたのだとの感慨を覚えます。
さて、このたび「No More Ransom」プロジェクトには新しいパートナーと新しい復号ツールが加わり、さらに大きな広がりとパワーを得ることとなりました。
アソシエートパートナーとして「No More Ransom」に新たに加わったのは、私たちの同業であるセキュリティ企業のBitdefender、Check Point、Emsisoft、Trend Microです。これで、より多くの無料復号ツールがプロジェクトのWebサイト(英語)を通じてご利用いただけるようになりました。
また、サポートパートナーとして、以下の企業と組織がプロジェクトに加わりました。AnubisNetworks、AON、Armor、Association for Preventing and Countering Frauds(APCF)、BH Consulting、CECyF(Centre Expert contre la Cybercriminalité Français)、Cyberlaws.NET、Cylance Inc.、DATTO Inc.、ESET、FS-ISAC(Financial Services – Information Sharing & Analysis Center)、G-DATA Software AG、Heimdal Security、s21Sec、Smartfense、SWITCH、Ukrainian Interbank Payment Systems Member Association(EMA)、CERT-EU(Computer Emergency Response Team for the EU institutions, agencies and bodies)、IRISS CERT(Irish Reporting and Information Security Service)、CIRCL.LU(Computer Incident Response Center Luxembourg)、SI-CERT(Slovenian Computer Emergency Response Team)。
Kaspersky Labは官民4団体によるランサムウェア対策プロジェクト「No More Ransom」を始動。新たにランサムウェアShadeの復号ツールを公開しています。 https://t.co/WIX0ZKJRYX pic.twitter.com/sfnrzyg9s7
— カスペルスキー 公式 (@kaspersky_japan) July 29, 2016
また、オーストリア、クロアチア、シンガポール、スロベニア、デンマーク、フィンランド、マルタ、ルーマニアの各国警察も「No More Ransom」プロジェクトの新たなサポートパートナーとなり、参加国の数は22を数えます。
また、このプロジェクトのWebサイトは英語でのご利用となっていましたが、イタリア語、オランダ語、フランス語、ポルトガル語、ロシア語にも対応いたしました。当Webサイトのツールを使って、身代金を支払わずにデータを復号できた方々の人数は、現時点で6,000人近くに上っています。私たちとしても、非常に喜ばしいことです。
No More Ransomプロジェクトは、新しいパートナーを迎え、ランサムウェアに暗号化されたファイルを復号できる無料ツールを新たに加えつつ、成長を続けています。プロジェクト参加国が増えるほど、ランサムウェア開発の罪で起訴される犯罪者の数も増加することでしょう。そうなれば、復号に必要なキーが保管された指令サーバーを政府当局が押収できるようになり、ひいてはより多くの復号ツールを開発可能となるのです。
また、プロジェクトに参加するセキュリティ企業が増えれば、セキュリティ業界の協力の下で、より多くのツールの開発が見込まれます。私たちは、このプロジェクトが成長し続けることを希望すると同時に、パートナーと力を合わせてランサムウェアの流行を食い止め、被害の拡大を阻止していきたいと強く願っています。「No More Ransom」の取り組みによって暗号化型ランサムウェアの採算性が下がることで、ランサムウェアを使ったサイバー攻撃がいつか下火になるであろうことを願います。
しかし、戦いはまだ終わっていません。インターネット上で待ち受ける脅威に、私たちの誰もが注意しなければならない状況は、まだ変わりません。ランサムウェアの詳細を知りたい方には、こちらの記事がお勧めです。また、すでに被害に遭ってしまった場合は、nomoreransom.org(英語サイト)にアクセスして適切な復号ツールを探してください。そして、一番の対策は、ランサムウェアに感染しないようにするため、または万一感染した場合にも対処できるように、前もって防御手段を講じておくことです。