インターネットの利用が一般的となり、ニュースを読んだり買い物をしたりという日常の行動がオンラインへと場を移してきました。総務省のデータによると、個人の年齢層別インターネット利用率は、13〜59歳の各層で9割を超え、60〜64歳で81.2%、65〜69歳で67.9%、70〜79歳で46.7%となっています(『総務省平成30年情報通信白書』による)。個人情報の流出やウイルス感染、インターネットを通じた詐欺などの事件が報じられることも増えてきました。
カスペルスキーでは、日本国内の18〜79歳のセキュリティ製品利用者624人を対象に、セキュリティ意識に関するインターネット調査を実施しました。この調査結果から、人々がインターネット利用においてどんな心配事を抱えているのかを読み解いたところ、親のいる回答者の約半数(47.6%)が、親のインターネット利用について不安を持っていることが明らかになりました。
親を心配する子どもたち
親のインターネット利用を心配する傾向は、下図にあるように、若い世代に強く表れています。また、男性よりも女性の方が、親のインターネット利用に対する不安を感じており、10〜30代の女性の場合は約80%が「不安がある」と回答しています。
不安に感じる項目を見ていくと、上位に来たのは「ウイルス感染」「個人情報やパスワードの漏洩」「不正請求、不正送金」で、「偽サイトや詐欺サイトによる金銭的被害」が続きます。
意識の隔たり
一方で、シニア層(60代、70代)のセキュリティ意識はどのようなものでしょうか。「シニア(高齢者)のインターネット利用トラブルが増えたと思うか」を問う設問に対する回答は下図のとおりです。10代〜50代の回答者のうち「とてもあてはまる」「ややあてはまる」を選択した人は50%を超えていますが、当事者である60代、70代は40%台と、やや低めの数値となりました。
本調査の詳細については、こちらのページをご参照ください。
リスクとリスクの避け方を知るために
カスペルスキーと静岡大学 教育学部 塩田研究室は、シニアのインターネット利用に関する啓発の必要性を感じていました。そうした背景から共同開発されたのが、情報セキュリティ啓発教材「ネットの『あやしい』を見きわめよう」のシニア編です。
「ネットの『あやしい』を見きわめよう」は、インターネットを利用する際に遭遇しがちなリスクを取り上げたカード型教材です。シニア編は、「架空請求」「偽ショッピングサイト」など、特にシニアにとって影響が大きいと考えられる具体例を取り上げ、リスクを見きわめるポイントや対策のしかたをゲーム形式で楽しんで学べるように構成されています。カードは、見やすいはがきサイズです。
静岡大学 教育学部の塩田真吾准教授は、スマートフォンを使い始めたシニア世代の親を持つ、まさに「親を心配する子ども」です。教材開発にあたっては、消費者白書など公のデータを参照するだけでなく、自分の両親や両親周辺の人々の生の声を聞いて取り入れたとのことです。塩田准教授にお話を聞きました。
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教材開発で意識したことは、「教える」というよりも「自分ごととして考えてもらう」「楽しく学んでもらう」という点です。トラブル事例を伝えても、「そんなことは知っている」「自分には関係のないこと」という反応になってしまいがちです。また、恐怖を煽るような伝え方(○○しないと、こんなひどいことになる)だと、意識付けとしては短期に留まり、逆に「そんなことは自分の身には起きない」という他人ごと意識が出てくることにもなってしまいます。実際に自分で考えて判断してみて、その判断がどうだったかというフィードバックを得ること、ゲーム形式で楽しくやることで、自分ごととして腹落ちしやすくなります。
この教材は消費者センターや地域コミュニティのセキュリティ啓発セミナー等での利用を想定していますが、ご家庭で活用していただくのもいいですね。ちょうど年末年始にかけて帰省する人も多いでしょうし、家族で過ごすまとまった時間も取れるようになる時期なので、いい機会だと思います。
こんなリスクがあるから教えてあげよう、という視点ではなく、親子で一緒にセキュリティのことを考えるスタンスが大切です。この教材はゲーム形式になっているので、親と一緒に自分もやってみるのもいいと思います。案外、自分自身も学ぶことがあるかもしれません。可能ならばお子さん(お孫さん)も加えて、親子3世代で楽しんでいただきたいですね。実はお孫さんが一番詳しくて、いろいろ教えてくれるかもしれません。
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教材は、非営利目的であれば、カスペルスキーの公式ページから無料でダウンロードしてお使いいただけます。詳しくは、以下ページをご覧ください。
- シニア向け:ネットの『あやしい』を見きわめよう