自動運転車:思い描く5つの未来像

2015年5月15日

自動運転車の話題がメディアに初登場して以来、議論の方向は変化を見せています。昨年は、このすばらしい未来が(本当に実現するなら)いつやって来るのか、その具体的な時期をめぐって議論が展開されていました。しかし今年は、自動運転車が開発されたらどうなるかが議論されるようになりました。いよいよ、長年使い慣れたハンドルに別れを告げなければならない日が来るようです。

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そこで、新世界の到来にあたって別れを告げなければならないことについて考えてみました。運転という行為そのものの喜びや、仕事帰りの飲み会を断るためのうまい言い訳。それ以外にも何かあるはずです。

1. ツインベッド付きオープンカー

ロボットが車を運転してくれるなら、乗っている人間は何とかして時間をつぶさなければなりません。最新の電子機器がいろいろ出回っているので、普通の人ならどうということはないでしょう。

とはいえ、問題はあります。運転していないと、人間は車に酔う可能性が高くなるのです。ミシガン大学の調査によると、米国の成人の6~10%は自動運転車で吐き気や乗り物酔いの症状を訴えるそうです。

こうした症状が出るのは、脳が視覚から受け取る信号と、内耳の前庭器官から受け取る信号にズレが生じるためです。本を読む、ビデオを見るなどの行為は症状が出やすくなります。逆に、道路を見る、眠るなどの行為は症状が出にくい、とこの報告書を執筆したマイケル・シバック(Michael Sivak)氏とブランドン・ショートル(Brandon Schoettle)氏は指摘しています。

ですから、自動運転車の中でFacebookをチェックする、テレビを見る、というのは万人向けではありません。かといって、ロボットが淡々と運転している間、自分はジッと道路を見つめている、というのも同じくらいキツそうです。残された選択肢は眠ることくらいですが、自動車の中で眠ろうとした経験のある人ならおわかりのとおり、現代の車はあまり睡眠に向いていません。結局のところ、自動車のインテリアを改装するか、酔い止め薬を飲む、くらいのものでしょう。

2. 急がば回れ

自動運転車の走行速度は通常の車両よりも遅いので、高速道路に専用車線を設けるのが現実的だろう – Fast Companyのコラムニスト、ジャレド・フィックリン(Jared Ficklin)氏はそう述べています

フィックリン氏によると、人間が制限速度と運転規則を守らない理由は2つあります。まず、人間は総じて自制心に欠け、重要な会議にぎりぎりで駆け込もうとする習性があるため。2つめは、運転という非生産的な作業で無駄になる時間を埋め合わせようとするため(もちろん、心の底から運転を楽しみ、ストレスを解消している人もいますが、これは例外ケースです)。

完全自動運転ではどちらの問題も解消されるはずです。ノートパソコンなら、社内でも車内でも仕事の場所を選びませんから(車酔いしないことが前提ですが)。しかし、急いでいる人間とロボットが同じ車線を走行するというのはいただけません。高い確率で、心臓発作か自動運転反対運動が起きるでしょう。つまり、自動運転車専用の「低速」車線なしにはやっていけないのです。

いつか、昔ながらの運転を楽しめる道を探さなければならない日が来るでしょう。

3. 移行期の問題

抑制の効いたロボット運転手は、人間では考えられない素早さで反応しますし、道端のかわいい女の子やメールの着信に気を取られることもないので、交通安全に大きく貢献すると思われます。しかし、シバック氏とショートル氏は別の調査でこのような意見に疑問を呈しています。

両氏の主張を煎じ詰めると、どうしたって移行に数十年はかかるということになります。おびただしい数の自動車を新しくするには長い時間が必要です。米国でさえ、自動車の平均使用年数は11.4年です。おまけに、自動運転車を使わない主義の保守的な人はどこにでもいることでしょう。

走行中のロボットと人間が意思疎通を図るのは難しく、短期的には交通安全の低下を招くだろう、と両氏は考えています(少なくとも先ほどの保守派ドライバーにとっては)。運転するときは、一般的に、他のドライバーの行動をうまく予測する能力に頼るのが普通です。

男性ドライバー同士が事故を起こす頻度は女性ドライバー同士よりも低いことが、交通事故に関する統計で明らかになっています。これは自動車を運転している男性双方の行動予測能力で説明できると、シバック氏とショートル氏は考えています。ロボットの行動を予測する能力は、人間にまだ備わっていません。たとえ両者が別の車線を走行していたとしても、予測は難しいでしょう。

4. タクシー運転手の反対運動

車の維持費は年々高くなっているので、大都市に住む人は車を自分で所有して運転するよりも、安上がりなカーシェアリングを選ぶことが多くなっています。いずれ、人間が運転するタクシーよりも自動運転タクシーのほうが安くなる日が来るでしょう。ロボットに賃金は必要ないので。現代の米国の家庭で一般的な「一家に2台」主義は、贅沢なものとなるでしょう。自動運転車両なら、複数の人間をそれぞれの目的地に送っていけます。

そして、人間が運転という楽しみを取り上げられたとき、大衆文化が長きにわたって見出してきた車の「魅力」が失われてしまいます。電車やバス、タクシーと同じ単なる移動の手段なのだったら、車体を磨きあげたり、さらにハイグレードなモデルを買ったりすることに何の意味があるでしょうか?

一言でいえば、このままいくと自動車の生産と販売は縮小し、カーシェアリングが台頭し隆盛して、職を失った大勢のタクシー運転手がストライキに突入することになるでしょう。

5. 駐車の時間

ここまでかなり極端に憂鬱な未来予想図を描いてきましたが、今度はその埋め合わせとして、自動運転車がもたらす利点に焦点を当ててみます。

人間は完璧ではありませんから、ある程度の速度で走行しているときには安全な車間距離を保たなければなりません。ロボットならこんなことを気にする必要がないため、道路を走行する車両の数が増えます。

また、駐車も簡単になるでしょう。まず、今よりも間隔を詰めて駐車できるようになります。これは、ドライバーや同乗者をあらかじめ、都合のいい場所で降ろせばよいからです。次に、20階を超える高さの駐車場を建てることができます。どんなに高いところでもロボットは気にしませんから。また、都市の中心に駐車する必要はまったくありません。乗客を降ろしたら、自動運転車はもっと手ごろな値段の駐車場を探しに行けばいいのです。

最後に。自動運転車なら、洗車や給油のために並ぶ必要がなくなるでしょう。ロボットが夜の間に最適なタイミングを見計らって、ガソリン給油、水素充填、バッテリー充電などの用事を片付けてくれます。

今回は、この先どんな事が待ち受けているかをちょっと想像してみましたが、将来必ずこうなるというわけではありません。どこから見るかによって、未来像は変わってきます。サンフランシスコから見るのか、それとも、たとえばシベリアのノボシビルスクか。世界は、今、目の前で変化を続けているのです。