2月24日、年に1度開催されるモバイル業界随一のイベント「Mobile World Congress」がバルセロナで開幕しました。初日から驚きのニュースがいくつか飛び出し、多くはセキュリティの展望を変えるであろう内容でした。
Nokiaは、手頃な価格帯の携帯電話ラインナップを発表しました。インターネット接続が可能で、SNSやWebサイトへすぐアクセスできるフィーチャーフォンは29ユーロ。最も安価なフルタッチパネルモデルのNokia Asha 230は45ユーロで、こちらもかなり魅力的な価格設定です。しかし、最も興味深くセンセーショナルだったのは(事前リークがあったので話題性は損なわれたとはいえ)、Android搭載のスマートフォンNokia X、X、 XLの発表です。この3機種はAOSP (Android Open-Source Project)をベースとしており、Googleのサービスが付属しないタイプのAndroidデバイスです。Google Play、Googleマップ、Google Play Music、G+ドライブ、Gmailの代わりにNokia Store、HERE Maps、Mix Radio、OneDrive(SkyDrive)、Outlook.comに対応しています。Google の各種サービスを直接起動しないとはいえ、XシリーズはAndroidアプリを実行可能です。アプリのサイドローディング(.apkファイルからインストールすること)が可能なのは、あまり良いニュースではありませんが。というのも、マルウェアに入られやすい今時のモバイルデバイスにNokiaのスマートフォンも仲間入りする、ということにほかならないからです。NokiaのAndoidストアでもカスペルスキー インターネット セキュリティ for Androidがすぐに発売されることを願っています。
初日のハイライトは、マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)氏による基調講演でした。同氏は、インターネットやインターネットがもたらすあらゆるサービスを世界のほぼ 全域に行き渡らせるという寛大な構想を訴えるのに、講演時間のほとんどを当てました。ザッカーバーグ氏は、現在は全人口のほんの3分の1しかインターネット接続が行き渡っておらず、残りの人々は経済的な問題や識字の問題、モバイルネットワークの欠如などの理由でインターネットの恩恵に預かれていないと語りました。Ericsson、Facebook、MediaTek、Nokia、Opera、Qualcomm、Samsungが共同で立ち上げたInternet.orgは、これらの課題に取り組んでいきます。もちろん、最近明らかになったWhatsApp買収についても質問が飛びました。ザッカーバーグ氏は、WhatsAppが独立して活動していくこと、現在のサービスが大きく変わる(広告の導入やプライバシー設定の削除など)ことはないことを請け合いました。配信済みのメッセージがサーバーから削除される現行のシステムは、継続されるとのことです。同氏はさらに、WhatsAppチームは今後5年間、サービスの向上とユーザー数の拡大に取り組まねばならない、と述べました。なお、WhatsAppの創業者ジャン・コウム(Jan Koum)氏は基調講演に先立ち、WhatsAppに音声通話機能が近々実装されると記者団に語っています。
Nokiaの安価なスマートフォンとザッカーバーグ氏の語るInternet.orgの共通点は?どちらも、明らかにインターネットへ新たな聴衆を迎え入れようとしています。インターネットはエキサイティングで有用な場である一方で危険な場所でもあり、Internet.orgの創始者たちは来たるべき何十億もの人々を教育することについても考えねばなりません。Webサーフィンの作法、適切なコミュニケーション方法、フィッシングなどのトラブルに遭わないための方法、などです。
多くのセキュリティベンダーは、自社のモバイルセキュリティアプリやモバイルデバイス管理製品の改良バージョンを発表しました。しかし、消費者の立場からいって最も注目すべきは、生体認証です。Appleに続き、ハードウェアベンダーもソフトウェアベンダーも、使いづらくて時に信用ならないパスワードに代わる提案を示しました。
Samsungは、長く待たれていたGalaxy S5について発表しました。スペックが徐々に改良されており、16メガピクセルのカメラのほか、指をスワイプするだけでロック解除可能な生体認証センサーが搭載されました。PayPalとの提携によって、この認証方法はモバイル決済にも活用されてくることでしょう。また、個人情報をうっかり流出させないためのデジタルロック機能も搭載され、この機能は指紋認証によっても保護されています。
指紋認証機能を持たないスマートフォンに関しては、カメラが生体認証スキャナーの役を担います。顔認証にとどまらず、たとえば目の認証に基づいた技術を発表した企業がいくつかありました。カメラの解像度が虹彩認証には及ばなくても、眼球の毛細血管が織りなすパターンにも個人差があります。HoyosIDは、パスワードに代わる、スマートフォンを使った顔認証と目の認証を紹介しました。パスワードを使わなくて済むようにするには、コンピューターにソフトウェアエージェントをインストールし、スマートフォンにはアプリをインストールします。このシステムはしかし、実装した際のぜい弱性について、まだエキスパートによる調査を受けていません。
Kaspersky Labは今年も、Mobile World Congressに出展しています。引き続き、この展示会のレポートをお届けしていく予定です。