空のハイウェイ:航空路の仕組み

無数の飛行機が縦横無尽に空を行き来しているのに、なぜ衝突しないのでしょうか。航空機を安全に飛ばすためのルートについて紹介します。

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Flightradar24のような航空機追跡サービスで、たくさんの飛行機が地図上を動き回るのを見ていると、その様子はまさにブラウン運動。無数の飛行機が空を行き来しているように見えるのに衝突しないのは、きっと何か説明できない奇跡が働いているおかげでしょうか。もちろん、そんなことはありません。航空産業の特徴として知られる、最高レベルの安全性を、私たちは目の当たりにしているのです。

まず、飛行機は常にウェイポイントに従って飛んでいることを知っておきましょう。『バック・トゥー・ザ・フューチャー2』で交差点の目印に使われていた、宙に浮いて光る標識を思い出してください。そうすれば、ウェイポイントがどんなものか想像しやすいでしょう(ところで、もう2015年になりましたが、ホバーボードはまだ見かけませんね)。目印という点で、現実はSF作品と大して変わりありません。標識こそありませんが、地図上には実際の目印となるスポットが存在します。

空港から空港へのルートは、これらのウェイポイントを通過。飛行機は一直線に飛ぶのではなく、ある地点から別の地点へ移動する

地理的な位置情報の座標には固有の名前がついています。原則としてアルファベット5文字で、読みやすく、覚えやすい名前です(例:OKUDI、PESOT、LISNA)。

アルファベットの組み合わせ自体に特に意味はないのですが、その座標近くにある人口密集地を連想できる組み合わせになっていることもあります。

ある空港から別の空港までのルートは、これらのウェイポイントを通過します。飛行機は一直線に飛んでいるわけではありません。ある地点から別の地点へ移動しているのです。距離が長くなるほど、いくつもの点を線でつないだ航空路はほぼ直線状になります。こうする理由はシンプルです。距離が短くなるほど、消費燃料が少なくなるからです。

飛行機は曲線を描いて飛んでいると思っている人はたくさんいます。確かにFlightradar24では航空路は曲線で表示されますし、機内の画面でも同様です。しかし、これは当たり前のことです。地球は球体ですが、地図やモニターは平面だからです。航空路が極点に近くなるほど、航空路を表す線のゆがみは大きくなります。

たとえば、モスクワからロサンゼルスへの航空路を地図で見ると放物線を描いています。しかし、地球儀を持ってきて、この2都市の間にぴんと糸を張ってみれば、実際に飛行機が飛ぶルートは糸のラインとほぼ同じ、つまり最短距離であることがわかります。

もっとも、これが大洋を横断するフライトになると、話はちょっと複雑になります。ボーイング747やエアバスA380のようなエンジンを4基搭載した飛行機(4発機)の場合はいたって単純で、最短ルートを飛ぶだけです。それ以外の飛行機については、ETOPS(Extended range twin engine operational performance standards、イートップス)認定のため、そうはいきません。エンジン2基の双発機が大洋を横断飛行する場合、安全上の理由により、陸地からかなり離れたところを飛ぶことは許されていないのです。

双発機は、緊急着陸可能な飛行場が最寄りにあるルートを飛ばなければならない

実際はもう少し複雑な話です。双発機は、緊急着陸可能な飛行場が最寄りにあるルートを飛ばなければなりません。一方、長距離飛行に使用される機体幅の広い大型飛行機の場合は、機体の全長が問題になります。どこの滑走路にでも降りられるというわけではないので。

原則はこうです。エンジンの1基に不具合が生じた場合、飛行機は残ったエンジンを使って、受け入れ可能な最寄りの空港に向かいます(もう1基のエンジンも故障した場合、海の真ん中に不時着させるのは最善策ではありません)。

幸い、最新鋭の航空機はETOPS-180認定(最寄りの空港まで180分以内の範囲を飛行できる)やETOPS-240認定を受けているものが増えてきました。エアバスの最新型A350XWBは、なんとETOPS-370に認定される予定です。「なんでそんな面倒なことを…。4発機を飛ばせば済むことなのに…」と思われるかもしれません。しかし、結局のところ大切なのは燃料の節約です。4発機は双発機よりも大量の燃料を消費します。100%の燃費効率なんてものはありませんから。

航空交通はディスパッチャー(運航管理者)が管理しています。ディスパッチャーは同じ航空路を次々と飛んでいく飛行機を監視し、飛行機同士が5㎞以内に近づかないように目を光らせています。

さらに、飛行機はフライトレベルという単位を使用して、異なる高度を飛ぶように指示されています。フライトレベルはある一定の飛行高度で、たとえば、FL350(35,000フィート≓10km)、FL270(27,000フィート≓8km)などのように、フィート単位の高度を100分の1にした数値で表されます(「FL」は「Flight level」の略)。

偶数のフライトレベル(300、320、340など)は西回りのフライトに、奇数のフライトレベル(310、330、350など)は東回りのフライトに使用されます。つまり、同じ航空路を異なる方向に飛んでいる飛行機と飛行機の高度差は少なくとも300メートル以上あることになります。より高度な四分割法(フライトレベルを2方向ではなく、4方向に分ける)を使っている国もありますが、原理は基本的に同じです。

さてここで、飛行の方向について、少し詳しく見ていきたいと思います。ウラジオストクからモスクワへのフライトは、その正反対の方向へのフライトよりも多少時間がかかることをご存じの方も多いのではないでしょうか。この珍現象は、行きと帰りでルートが異なるからだと説明する人もいます。

ウラジオストクに向かって飛んでいるときは、飛行機の移動方向と地球の自転方向が同じで、モスクワ行きのフライトの場合は、逆の方向になるからだと考えている人もいます。こういう人たちは、小学校2年生の理科の授業に出席して、地球とともに大気が回っていることを教わったほうがいいでしょう。

とにかく、理由はシンプルです。北半球では、風は主に西から東に吹きます。つまり、ウラジオストクに向かうフライトでは、飛行機は風に乗って飛んでいきますが、モスクワ行きのフライトでは、風に逆らって飛ぶことになるからです。

この風が非常に強いと、ノボシビルスクからモスクワまで通常は4時間のフライトにまるまる5時間かかることもありますが、さらに長くなるケースもあります。飛行場に着陸する順番を待つ飛行機は、着陸可能な時間帯が割り当てられるまで、空中で待機していなければなりません。このような飛行機のために、空港からそれほど離れていないところに専用の待機ゾーンが設けてあります。飛行機はアプローチと着陸を許可されるまで、低い高度で旋回しながら、このゾーンで待機します。

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