LTE-U:5G実現に向けて進化するネットワーク技術

2015年8月6日

最近、EricssonとQualcommが最先端技術「LTE-U」のプロモーションを始めました。LTE-Uは、米国、ヨーロッパ、ロシア、中国など世界中で利用範囲を拡大中のLTE-Aよりも優れているのでしょうか?そもそも、このアルファベットにはどんな意味があるのでしょう?

まずは、名称から。LTE-Aは「LTE-Advanced」の略称で、「高度な第4世代モバイルネットワーク」という意味です。このネットワークは世界各国で展開されています。もう1つのLTE-Uは、もちろん「LTE-Ultimate」(究極のLTE)や「LTE-Unbeatable」(無敵のLTE)の略称などではありません。「U」は「Unlicensed」(無免許)を意味します。つまり、「無免許」の周波数帯を利用するモバイルネットワーク技術ということです。

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では、「無免許」とはどういう意味でしょうか?これは、単純です。モバイル通信事業者やラジオ局などが使用する電波周波数の大半は、免許が必要です。これらの周波数は行政機関が管理しており、この周波数を使って送信できるのは免許を交付された事業者だけです。

低容量の民間向け送信機では無免許の周波数が使われています。誰でもその周波数を使って無線信号を送信できます。リモコン付きのおもちゃを子供に買ってやるたびに許可が必要となると大変なので、当然と言えば当然です。この「自由な」無線周波数帯には重要な利用要件があり、他の人の機器に干渉しないよう電波出力の上限が設定されています。

LTE-U構想のベースにあるのは、「自由な」周波数帯を使ったLTEネットワーク。つまり、室内で利用するための低出力基地局のこと

たとえば、リモコンのおもちゃには27MHz帯、トランシーバーには433MHz帯、Wi-Fiルーターには2.4GHz帯と5GHz帯が割り当てられています。これらの帯域は国ごとに異なり、そのため互換性が問題になっています。

LTE-Uは、「自由な」周波数帯を使ったLTEネットワークを基本とした構想です。要するに、フェムトセルやピコセルといった室内で利用するための低出力基地局のことです。自由な周波数帯を数多く「集約」すれば、つまり複数のパラレル伝送チャネルを1つにまとめれば、高いデータレートを実現できます。

ここで、疑問が頭をかすめます。それなら、Wi-Fiなんていらないのでは?いいえ、誰もWi-Fiを見捨てるつもりはありません。むしろ逆で、今後もローカルの小さな無線ネットワークの基盤として活用されます。

Wi-Fi技術がブロードバンドアクセスネットワークの構築に利用されたのは、単に他の選択肢がなかったからです。そもそも、Wi-Fiには無線ブロードバンドネットワークの信頼性を確保する上で重要な機能がありません。たとえば、接続数が増えた場合にネットワーク効率を管理するための最新機能、セキュアな認証方式、複数の周波数帯域を1つの伝送チャネルに集約する機能(キャリアアグリゲーションなど)が実装されていません。

一方のLTEには、これらの機能がすべて仕様として実装されています。無免許の周波数帯はさまざまな周波数帯域の電波で構成されているので、すべて集約すれば高帯域のネットワークを実現できます。

5Gネットワークの実現はまだまだ先の話なので、それまではWi-Fi環境がPCやテレビなどの家電を接続する役目を果たすのかもしれません。トラフィックを多く消費するデバイス(主にスマートフォンやタブレット)は、LTE-Uの世界に属します。そして、これらをホームネットワークへ統合するために設計されたのが、リンクアグリゲーション技術です。この技術では、LTEとWi-Fiの周波数帯を統合し、周波数を蓄積した「プール」を形成し、両方の無線技術をデバイスで利用できるようにします。

このアプローチによって、異なるネットワーク間のトラフィックを調整できるほか、両方のネットワークを同時に利用することで高いデータレートを実現できます。もちろん、現在のセッションを中断せずに、シームレスにネットワークを切り替えることも可能です。言い換えれば、ホームネットワーク内で自由にローミングするようなものです。

おそらくLTE-Uは、既存の3Gフェムトセルとほぼ同じように展開されます。加入者はフェムトセルを購入し、利用するモバイル通信事業者にそのフェムトセルを登録することになるでしょう。

通信事業者側から見ると、暗号化されたVPNチャネルが確立され、論理的に異なる2つの接続チャネルが1本の物理ケーブルを介して動作します。

ちなみに、LTE-Uは家庭向けプロバイダーのインターネット接続速度を向上させるわけではありませんが、無線通信をモバイルデバイスから効率的に利用できるようになります。

しかし、LTE-Uのアイデアは理想的とは言えません。LTE-Uの導入はサービスプロバイダーの協力を前提としており、そのサービスプロバイダーが常に積極的に動いてくれる訳ではありません。多くのプロバイダーは同じような課題に対し、別の方法で対処してきました(室内接続のオフロード、いわゆるWi-Fiオフロードなど)。

つまり、通信事業者は巨大なWi-Fiネットワークを展開し、シームレスなオフロードやSIM認証を実現し、Voice over Wi-Fiサービス(Wi-Fi Calling)を提供しました。このインフラストラクチャには莫大な費用をかけているので、投資を回収しなくてはなりません。すべて回収する頃には、5Gが登場してしばらく経っていることでしょう

その一方で、トラフィック増大の課題に取り組み続けている通信事業者は、Wi-Fiオフロードに投資するか、(サポート体制の不足や不透明な未来を認識しつつ)LTE-U開発で先行するかという、難しい選択に直面することになります。今後どうなるのかは、私たちが見届けることになるでしょう。