はじめに
会社は単なる組織ではない。ひとつのコミュニティだ。過去20年間にわたり、我々は世界中の仲間たちと共にKaspersky Labを作り上げてきた。かばんの中に希望、夢、恐れ、挑戦を詰め込み、自分たちにしかできないことをやり遂げたいという強い覚悟をもって、会社にやって来る仲間たちと共に。
良い時期も悪い時期も力を合わせて乗り越え、お互いから多くのことを学んできた。そして、設立20周年を迎えた今、その大切な洞察と経験をぜひ皆様と共有したいと考え、さまざまなアイデアやアドバイスをご紹介することにした。今後、経営上の課題やビジネスチャンスに遭遇したとき、効果的に対応するためのヒントとして役立てていただければ幸いだ。特に、小規模企業、起業家、そして創業して間もない若い企業の皆様に参考にしていただきたい内容ばかりだ。乗り越えるべき大きな山を迎える、いつかその日に備えて。
情熱を傾けられる仕事に就くことができた私は、本当にラッキーな人間だ。そして20年が経った今でも、「あれは何だろう」「どうなっているんだろう」という好奇心の赴くままに行動している。私はテクノロジーに心を惹かれ、周囲の人たちから多くのことを学んでいる。
これほど長い年月を経た今でも、日々このビジネスから刺激を得ている。皆さんもそうであることを願っている!
ユージン・カスペルスキー
Entrepreneur InsiderネットワークおよびFortune誌(英語記事)によると、ビジネス上の難しい決断は10分以内に下されるべきだとされています。
1.成長する事業を率いるにあたって
新規事業の立ち上げは刺激的な体験です。同時に、苦難の連続で、若い企業の多くは失敗に終わります。ヨーロッパと米国では(いずれもリンク先は英語記事)、零細企業のおよそ3社に1社が創業2年を待たずして終焉を迎えると言われています。従業員数10名以上の企業の場合、この割合は5社に1社になります。しかし言い換えれば、少なくとも2/3の企業は、初期の困難な時代を乗り越えられるということです。成功を手にするためには、どうすればいいのでしょうか?
Kaspersky Labも、初期には数多くの試練を経験しました。当時、ロシアには起業家を支援する制度がなかったため、創業者らは、19人の社員を抱え、定期的に仕事が入ってくるあてもなく、ただ会社の操業を続けるためだけに無給で働くこともありました。このとき、障壁を乗り越える突破口となったのが、自社のテクノロジーを「ホワイトラベル化」して他社に提供する方法でした。こうすることで、マーケティング費と販促費を節約し、成長のための事業に資金を投じることができたのです。
立ち上げ時に重要なこと
「周りに自分より知的な人たちを集めること。そして、誰にも負けない強みを持つこと。ほかに追随するだけでは、企業として成功することはどんどん難しくなる」アレハンドロ・アランゴ
「勇気を持つこと。何か新しいことに挑戦し、世界を変え、失敗しても立ち上がることのできる勇気を持つこと」アンドレイ・ニキーシン
「毎日自問自答せよ。自分はなぜこれをしているのか?大きな会社を作るため?それとも良い生活を送るため?後者より前者の方が多くの犠牲を伴う」アリーナ・トープチ
企業として生き残るには
「企業として成長するためには、たとえ市場を支配することができなくても、自分が変化の渦を作っていることを認識することが大切である」アンジェロ・ジェンティーレ
「製品を作るのではなく、問題を解決せよ」トム・ハバード
「顧客が1社なら『取引』だが、2社になれば『市場』だ。2社に売ることができれば、100社に売れるだろう」ベニアミン・レフツォフ
「5~7年後も成功していたいなら、現在の事業に情熱と強みを投じ、時間をかけなければならない」エフゲニア・ナウモヴァ
成長の中で課題に直面するとき
「成功に足をすくわれないこと。ひとつのことで成功すると、ほかが見えなくなる。新たな見方やチャンス、動向に常に気を配ること」クラウディオ・マルティネリ
「異なる文化を持つ人々と考えをひとつにすることは、決して容易なことではない」川合林太郎
「オフィスに閉じこもっていないで、外に出て歩き回り、人と話そう。顧客やパートナーに会って、じっくりと理解し合おう。ただし、相手のやり方を尊重することが大切。相手は自分たちの土俵を熟知している。一度にすべての市場を知った気になるのは無謀だ」ユージン・カスペルスキー
「ある日、職場のカフェテリアで知らない顔ぶれを見かけることがあるかもしれない。環境がめまぐるしく変化して、とてもついていけないと感じることもあるかもしれない。でも大丈夫、そういうものだから」デニス・ゼンキン
「会社をステップアップさせるためには、もっと経験豊富な人材が必要なのではないかと、ふと気づく。これは大きな挑戦であり、なかなか踏み出せない一歩だ。今のチームに対して強い責任を感じ、大きな信頼を寄せているならなおさらだ」アレハンドロ・アランゴ
「事業の成長とスタッフの成長は必ずしも連動しない。たとえ長年一緒に働き、共に多くのことを成し遂げた友と呼べる仲間であっても、思うように成長できず、成長する会社の要求にうまく対応できず、必死でもがいているかもしれない。そのことに一刻も早く気づいてあげるべきだ」ニキータ・シュベツォフ
「立ち上げ間もない企業では、一人ですべてを担うことが多いが、会社の規模が大きくなれば、責任の一部をほかの人に委ねなければならない。すると、コントロールを失ったような感覚に陥るかもしれない」アンドレイ・ニキーシン
「時間をかけず無計画に成し遂げた成長によって、会社が制御不能に陥ることがある。コストの急増と内部の混乱を招くこともあるだろう。このことを肝に銘じ、会社を『健全な状態』に保つことが重要だ。たとえば、森に出かけて、目についたキノコを手当たり次第取っていたら、いつかはカゴがいっぱいになってしまう。キノコを選り分けて、良いものだけを選んでいれば、スペースに余裕ができる」アレクサンダー・モイセーエフ
困難な状況でこそ、ゆとりをもった行動を
「見通しが暗いときこそ、ちょっと立ち止まって、事業や製品開発、マーケットプランなどを再編成し、投資を見直すチャンスだ。こうして、状況が好転したらすぐに戦える準備を整えておこう」ニキータ・シュベツォフ
○協力者一覧 | |||
アレハンドロ・アランゴ(Alejandro Arango) 広報部長 |
アンドレイ・ニキーシン(Andrey Nikishin) フューチャーテクノロジー部スペシャルプロジェクト ディレクター |
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アリーナ・トープチ(Alina Topchy) セールスオペレーション&イネーブルメント担当バイスプレジデント |
アンジェロ・ジェンティーレ(Angelo Gentile) 北米地域財務・オペレーション担当バイスプレジデント |
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トム・ハバード(Tom Hubbard) グローバルデジタルマーケティング担当バイスプレジデント |
ベニアミン・レフツォフ(Veniamin Levtsov) エンタープライズビジネス担当バイスプレジデント |
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エフゲニア・ナウモヴァ(Evgeniya Naumova) コーポレートセールス部長 |
クラウディオ・マルティネリ(Claudio Martinelli) ラテンアメリカ地域経営責任者 |
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川合林太郎(Rintaro Kawai) 株式会社カスペルスキー代表取締役社長 |
ユージン・カスペルスキー(Eugene Kaspersky) 取締役会長兼最高経営責任者(CEO) |
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デニス・ゼンキン(Denis Zenkin) コーポレートコミュニケーション部長 |
ニキータ・シュベツォフ(Nikita Shvetsov) 最高技術責任者(CTO) |
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アレクサンダー・モイセーエフ(Alexander Moiseev) チーフセールスオフィサー |
勝負を分ける10分間:Kaspersky Labの20年間の洞察と経験から(中)
※『勝負を分ける10分間:Kaspersky Labの20年間の洞察と経験から』の英語版フルバージョンは、こちらからご覧いただけます。