船頭多くして船山に登る:アンチウイルスは絶対に1つだけ

アンチウイルス製品は、2~3種類インストールしたとしても、効果が上がるわけではありません。むしろ、大変な問題がいくつも起きる可能性があります。

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自分のシステムとデータを本気で保護しようと思うあまり、違う会社のアンチウイルス製品を2つ3つインストールすればセキュリティを強化できるはず、との結論に達する人もあるようです。何しろ、「三人寄れば文殊の知恵」といいますから。でも、このことわざはサイバーセキュリティにも当てはまるのでしょうか?

はっきりいって、「ノー」です!これは単に、アンチウイルス市場における競争の話ではありません。1台のコンピューターに複数のアンチウイルス製品をインストールすると、たとえ同じ会社の製品だったとしても、純粋に技術的な理由から、正常に動作しないのです。

まず、複数のアンチウイルス製品を同時に動作させると、システムリソースをめぐる争いが必ず発生します。どのアンチウイルス製品も、ネットワーク接続の確立やファイルへの書き込みなど、非常に多くの動作をコントロールしようとします。このようにWindows機能をめぐって「けんか」が起き、互いの邪魔をするのです。その結果、システムが遅くなることもあれば、まったく動作しなくなることもあり、場合によってはアンチウイルス製品が全部停止してしまうかもしれません。これでは困ります。

私は、システムの動作が遅いことに不満を示す人々を数多く見てきました。当社製品にその原因があるとの主張が往々にしてあるのですが、問題を詳しく調べてみると、アンチウイルス製品をいくつもインストールしていたことがわかりました。大手アンチウイルスメーカーの製品を網羅していたと言ってもいいくらいです。この問題を解決するには、製品を1つだけ選んで(ライセンスを自分で購入した会社の製品にしましょう)、他をすべて削除する必要があります。

また、一方のアンチウイルス製品が、競合するアンチウイルス製品のファイルを、感染したファイルと見なすケースも多く見られます。意図的にそうしているわけではありません。どんなアンチウイルス製品も、他のアプリケーションを制御するなど、(他のアンチウイルス製品から見て)「不審な」動作を何かと実行するからです。実際のところ、アンチウイルス製品のファイルは安全ですし、どのアンチウイルスベンダーも誤検知を減らそうと努力していますが、許可リストに漏れがある場合もあります。

カスペルスキー製品も、他社製アンチウイルス製品と同時に使用することはできません

カスペルスキー製品も、他社製アンチウイルス製品と同時に使用することはできません。たとえば、カスペルスキーインターネットセキュリティ(カスペルスキーマルチプラットフォームセキュリティのWindows対応プログラム)と併用できないアプリケーションのリストをこちらで確認できます。ご覧のとおり、このリストには他社製品と他のカスペルスキー製品が載っています。さらにMicrosoftや、比較的マイナーなアンチウイルススキャナーやアンチバナープラグインも多数掲載されています。

共存できない製品の一覧は、2つの部分にわかれています。1つは、Kaspersky Labをインストールする過程で簡単に削除できるもの。先に述べた問題を回避するために、インストーラーの推奨どおり他のアプリケーションを削除することを強くお勧めします。アンインストールのプロセスは自動的に開始されます。

リストの2つ目の項目には、当社のインストーラーだけでは削除できない製品が載っています。競合するアプリケーションをすべて特定したのにカスペルスキー製品のインストールが完了しない場合は、2つめのリストにあるアプリケーションがインストールされていないか確認してみましょう。そのようなアプリケーションが見つかった場合どうするかは、もうおわかりですよね。

アンチウイルス製品をインストールする前に、古いアンチウイルス製品をアンインストール専用ツールで削除しましょう

しかし、共存できない製品を、システム固有の機能では削除できないこともあり得ます。このようなときのために、各社では専用のアンインストール用ツールを提供しています。コンピューターにどのアンチウイルス製品をインストールしてあるかわかっている場合は、その会社の公式Webサイトからアンインストール用ツールをダウンロードして実行しましょう。当社では、大手アンチウイルスベンダーのアンインストール用ツールを1ページにまとめています。

特にお伝えしておきたいのが、次に挙げる例です。ある人が何らかの理由で、自分のコンピューターがマルウェアに感染していると判断しました。おそらく、アンチウイルスログの不審な記述を注意して見ていたか、システムが何かおかしな動作をしていたのでしょう。このようなとき、なんとかしようしてセキュリティ製品の無料版や試用版をいくつもインストールしがちですが、これは大きな間違いです。その結果、複数のアンチウイルス製品が同時に動くために1時間もするとコンピューターの動作が遅くなりますが、感染が疑われるマルウェアは野放しのままです。そうなると、コンピューターを生き返らせるには、システムを復元するしかありません。というわけで、結論です。絶対に複数のアンチウイルス製品をインストールしないでください。

「でも、じゃあどうすればいいの?」と思いますよね。まずは、システムをセーフモードで再起動して、コンピューターにインストール済みのアンチウイルス製品を使って完全スキャンを実行しましょう。ウイルスがオペレーティングシステムの奥深くに潜んでいることが間違いない場合は、この方法がうまくいくかもしれません。完全スキャンで何も見つからなかったときは、アンチウイルス製品を10種類インストールするのではなく、いま使っているアンチウイルス製品の会社のサポート窓口へ連絡しましょう。問題を安全に解決する方法を教えてくれるはずです。矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、こうしたケースでは、そもそもウイルスに感染していなかった、ということが非常に多いのです。

締めくくりに、最初に挙げたことわざを言い換えてみようと思います。「アンチウイルス製品は、1つなら良いが、2つはだめ」

ヒント

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Windows Downdateは、最新バージョンのOSを古いバージョンにロールバックさせ、脆弱性が残る状態を復活させ、攻撃者がシステムを容易に侵害できるような状態にする攻撃です。この攻撃のリスクを低減するにはどうしたらよいでしょうか?