Kaspersky調査:IT/テック業界の女性は仕事とキャリアをどのように捉えているか

IT/テック業界の職に就いている女性を対象としたグローバル調査で見えた、働く女性たちの意識。特に日本の傾向に注目しました。

Kasperskyは、IT/テクノロジー(以下:IT/テック)業界で働く女性のキャリア応援の一環として、グローバル調査を実施しました。新型コロナウイルス感染症の流行後(2020年3月以降)に少なくとも一部の期間に在宅勤務をした、IT/テック業界で働く女性が対象です。

新型コロナウイルス感染症の流行に伴う外出自粛やロックダウンは、在宅勤務へのシフトを加速させました。テック業界で働く世界の女性の半数弱(47%)が、オフィスワークよりも在宅勤務の方が望ましいと回答。一方で、在宅勤務により家事面の負担が増えたことから、感染症の流行がキャリアアップに遅れを生じさせていると感じる人も47%でした。しかしながら、在宅勤務はネガティブな側面ばかりではなく、離れて仕事をするチームの間で男女の平等が改善されたと46%が回答しています。ただ、業界が男性優勢であることが女性の業界参入に影響を与えていると思われるような結果も出ており、IT/テック業界内に女性が少ないためこの業界へ進むのをためらうとの回答が38%ありました。

日本に目を向けると、どのような傾向が浮かび上がってくるでしょうか。日本の女性(250人)の回答から得られた主な調査結果は次のとおりです。

調査結果:日本

調査対象となった日本の女性の53%が「オフィスワークより、在宅勤務の方が好き」または「効率的」と回答。世界の女性の47%より6ポイント多い結果になりました。また、93%は「在宅勤務はキャリアアップの妨げにならない」と回答。世界の女性の82%より11ポイント多く、在宅勤務はIT/テック業界で働く日本の女性に適しており、キャリアアップにとってもマイナスにならないと考える人が多いことが分かりました。

IT/テック業界で働きたい日本の女性を増やすヒントは「教育機関」からの後押しと、「ロールモデル」との出会いの創出になりそうです。また、現在働いている女性の価値観から探ったところ、就業の際に最も重要視されている「ワークライフバランス」(27%)、また、IT/テック業のアドバンテージとして30%が回答した「高い柔軟性」を提供することが有効だと考えられます。

【調査サマリー】

1)  2人に1人(53%)は「在宅勤務の方が好き」または「効率的」と回答。

2)  約9割(93%)が「在宅勤務はキャリアアップの妨げにならない」と回答。

3)  3人に1人(33%)が「コミュニケーション力」に強みを見出している。

4)  「感情知性(EI)」・「組織運営スキル」に優れているとした人は、在宅勤務が好きな割合が多い。

5)  女性就業を増やすヒントは「教育機関」からの後押しと、「ロールモデル」との出会い創出。

6)  就業時に重要視されている「ワークライフバランス」(27%)と、就業後に高評価の「高い柔軟性」(30%)の提供で、さらなる女性就業の後押しを。

【調査概要】

・調査期間:2020年11月28日(土)~ 2020年12月7日(月)
・調査方法:インターネット調査(アーリントンリサーチ社)
・調査対象:世界19か国の18歳以上の男女で、規模を限らず組織でIT/テクノロジー職に就いている13,000人(世界の調査結果には、日本も含まれる)。
英国(1,000人)、ドイツ(1,000人)、フランス(1,000人)、イタリア(1,000人)、スペイン(1,000人)、米国(1,000人)、カナダ(1,000人)、アルゼンチン(500人)、ブラジル(500人)、チリ(500人)、コロンビア(500人)、メキシコ(500人)、ペルー(500人)、オーストラリア(500人)、インド(500人)、マレーシア(500人)、シンガポール(500人)、ベトナム(500人)、日本(500人)。男女比は同数。

※本リリース上のスコアの構成比(%)は小数点以下を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%にならない場合もあります。

在宅勤務について

1)   半数以上が「好き」または「効率的」。IT/テック業の日本人女性に適している「在宅勤務」

IT/テック業界で働く日本の女性のうち、2020年3月以降で、少なくとも一部の期間に在宅勤務をした人の53%と半数以上が「オフィスワークより、在宅勤務の方が好き」、または「在宅勤務の方が効率的だと思う」と回答しました。世界の女性(47%)と比較して、日本の女性の方が在宅勤務を好み、また、効率的だと思っている割合が高いことが分かりました。

「オフィスワークよりも在宅勤務の方が好き」または「在宅勤務の方が効率的だと思う」人の割合

2)   9割以上の日本の女性が「在宅勤務はキャリアアップの妨げにならない」と回答

調査対象の日本の女性のうち、2020年3月以降、少なくとも一部の期間に在宅勤務をした人に、「在宅勤務はキャリアアップの妨げになると思うか」を聞いたところ、93%が「妨げにならない」と回答。世界の女性の82%と比較して11ポイント多く、日本の女性の9割以上と大多数が「在宅勤務はキャリアアップの妨げにならない」と感じていることが明らかになりました。

「在宅勤務はIT/テック業界で働く女性のキャリアアップの妨げにならない」と感じている人の割合

3)   IT/テック業界で働く日本の女性の3人に1人が「コミュニケーション力」に強みを見いだしている

自身のスキルについて最も優れていると思うものを聞いたところ、調査対象の日本の女性のうち33%が「コミュニケーション力」と回答し、世界の女性(28%)より5ポイント高い結果となりました。「問題解決力」(36%)、「感情知性(EI)」(30%)、「組織運営スキル」(29%)は、世界の女性と比較すると低い割合となりましたが、いずれも3割程度以上の日本の女性が回答しています。

在宅勤務を効率的に行うためには前述のすべてのスキルが重要になると思われますが、日本の女性は世界の女性と比較して特に「コミュニケーション力」に強みを見いだしていることが分かりました。

自分の最も優れていると思うスキル

4)  「組織運営スキル」「感情知性(EI)」が優れていると思う人は、「在宅勤務」を好む傾向

日本の女性の「優れていると思うスキル」別に、「オフィスワークよりも在宅勤務の方が好き」または「「在宅勤務の方が効率的だと思う」と回答した割合の相関関係を見ると、「組織運営スキルが優れており、在宅勤務の方が好き・効率的だと思う人」(65%)が最も多く、続いて「感情知性(EI)」の人も62%と6割を超え、「コミュニケーション力」の人では55%と、半数以上となりました。

特に「組織運営スキル」、「感情知性(EI)」が優れていると思う人では、日本の女性(53%)や世界の女性(47%)と比較して、「在宅勤務の方が好き」または「在宅勤務の方が効率的だと思う」人の割合が多いことが分かり、2つのスキルは、日本の女性の在宅勤務において、特に大切であるといえそうです。

「オフィスワークよりも在宅勤務の方が好き」または「在宅勤務の方が効率的だと思う」人の割合と「優れていると思うスキル」の相関関係

就業について

5)   教育機関による後押しや、ロールモデルとの出会いが女性の就業を増やすカギに

「IT/テック業界を目指して就職する人」を増やすことが日本の業界の課題であるなか、実際にIT/テック業界で働く女性に最初の仕事に就いた経緯を聞き、この業界で働く女性を増やすヒントを探りました。最も多かった就職の経緯は「自分で探した」(日本:51%、世界:44%)で、日本の女性は世界の女性と比較して7ポイント多く、半数以上の人が自らIT/テック業界の仕事を探したことが分かりました。

一方で、「学校/大学から勧められた」(日本:18%、世界:33%)は15ポイント差、「コミュニティのロールモデルとなる女性から勧められた」(日本:8%、世界:19%)は11ポイント差と、世界との差が浮き彫りになりました。日本の女性は、IT/テック業界の仕事に就くために自ら仕事を探す割合が高い一方、世界の女性と比較して教育機関からの後押しや身近な女性のロールモデルとの接点が少なく、これらを世界レベルに近づけることで、IT/テック業界の仕事を希望する日本の女性が増える可能性が感じられる結果となりました。

IT/テック分野の最初の仕事に就いた経緯

6)   「ワークライフバランス」と「高い柔軟性」の提供が、女性就業のさらなる後押しに

現在IT/テック業界で働く日本の女性が、仕事に就く際の動機として最も重要な要素は「ワークライフバランスに優れた組織」でした。日本の女性(27%)は世界の女性(20%)と比較してこの割合が高く、重視視していることが分かりました。

また、この業界の長所(自身へのアドバンテージ)としても、「高い柔軟性(勤務時間/在宅勤務など)」が2位で30%となりました。職場環境やワークライフバランスをとれることが現在IT/テック業界で働いている女性たちに重視されており、この長所を伸ばし、仕事と生活の最適なバランスを提供することで、女性がIT/テック業界で働くためのさらなる動機付けにつながると考えられます。

IT/テック分野で仕事を始めた動機となった要素

IT/テック分野でのキャリアが自身に提供すると思うアドバンテージ日本以外の調査結果、およびIT/テック業界で働く女性へのKasperskyの支援の取り組みについては、特設サイト(https://wit.kaspersky.com/)をご覧ください(リンク先は英語)。

ヒント