操作ミスを防ぐ電子飛行システム

2015年4月14日

先日の痛ましい出来事をきっかけに、1つの疑問が浮かび上がってきました。どちらかのパイロットが精神的に不安定になったとき、飛行中の安全を確保できるでしょうか?人的要因によるリスクを減らすために、何かできるのでしょうか?この質問に対する答えは、こうです – はい、できます。宇宙航空技術の大手、ボーイングとハネウェルとの共同開発によるシステムが、広い範囲で商業展開されるようになれば可能です。

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このシステムの原理は、とてもシンプルです。コックピット内が危機的、あるいは把握できない状況になった場合、機内の操縦システムのスイッチがすべてオフになり、操作できなくなります。操縦は地上にいるオペレーターが行うため、パイロットがボタンを押しても、機器を操作しようとしても、下の動画に登場するかわいいリスと同じ目に遭うだけでしょう。

では、どのような仕組みでしょうか。もちろん、ジョイスティックを持ち、VR(バーチャルリアリティ)ヘルメットを身に着けた技術オタクが送り込まれるわけではありません。飛行に必要なパラメータをすべてFMC(飛行管理コンピューター)にあらかじめアップロードしておくのです。これで、地上から完全に飛行を制御できるようになるわけです。たくさんの電子システムを準備しないと実現しないのでは…。そう思われるかもしれませんが、システムはもうあるのです。

フライバイワイヤー

現在の航空機では、フライバイワイヤーというデジタルテクノロジーが広く使われるようになっています。最初にこのテクノロジーを導入したのはエアバスA320。1980年代のことでした。このテクノロジーの基本原理はいたって簡単です。航空機の操縦には電子機器を用い、機械式装置(プッシュロッド、ケーブル、油圧回路、送電負荷増幅器など)は介さないのです。電子機器はコンピューターによって制御され、ワイヤー(電線)で接続されていることから、この名前が付きました。

このテクノロジーを導入する利点は、実にわかりやすいものです。航空機が軽くなり、値段も下がります。特に人的ミスを防ぐ安全対策という意味で、信頼性も高まります。あのジャーマンウィングスの航空機は、なぜ真っ逆さまに墜落しなかったのでしょうか?それは自動装置が飛行を制御し、大きなマイナスピッチや極端な沈下率を設定できないようにしているからです。

速度が下限値を下回ったときや、沈下率が極端な場合、高性能の電子システムが自動的に修正

最新の旅客機が失速スピンなどの状態に陥らないのも、理由は同じです。速度が下限値を下回ると、高性能の電子システムによって自動的に速度が上がるのです。

コンピューターで管理された飛行システムの割合が大きくなるほど、自動操縦システムで制御できることは広がります。たとえば、飛行の方向、速度、高度といったパラメータの操作だけでなく、フラップを必要な角度に設定する、着陸装置を出す、自動ブレーキをかけるなどにも対応できます。つまり、パイロットが何もしなくても、完全に自動モードで航空機を着陸させられるというわけです。

飛行パラメータをリモートで飛行システムにアップロードし、必要な着陸進入パターンを指定するだけでいいのです。そこから先はすべて自動的に行われます。

希望の標識

こんな魔法を使うには、とてつもなく精度の高いナビゲーションが必要と考える方もいるでしょう。幸い、航空業界は位置決めに必要な技術の大半をすでに利用していて、従来の航空技術では地上の無線標識が使用されています。標識の位置や周波数は操縦システムにあらかじめ通知されているので、受信機を特定の周波数に設定すれば、パイロットは標識の値域から航空機の位置を判断できます。

最も古い無指向性無線標識(NDB)と呼ばれる標識はアンテナを1本しか備えていないので、飛行システムでわかるのは、航空機からみた標識の位置だけです。

また、より複雑な概念に基づいたVOR(超短波全方向式無線標識)という標識もあります。この標識では、複数のアンテナが円形に配置されています。ドップラー効果を活用して無線標識から航空機までの磁方位、つまり標識に対する現在の航空機の航路を判断できます。

VOR標識はDME(距離測定装置)という標識と組み合わせて、距離の測定に使われることがしばしばです。飛行システムがリクエストを送信すると、標識が応答を送り返すため、その信号が届くまでにかかった時間の差から距離を計算できます。このようなデータをすべて活用することで、空中での位置を最大限正確に判断できるようになります。

適切な場所に着陸

着陸にはローカライザー送信機とグライドスロープ送信機が使用されます。ILS(計器着陸装置)はこの2つの装置から構成されています。

その仕組みを説明しましょう。まず、ローカライザー送信機は無線信号周波数の異なる「電界」を2つ(滑走路の左右に1つずつ)作ります。左右の信号強度が等しければ、航空機の位置は滑走路の中心軸に沿ってまっすぐになっているので、スイス時計のようにすべてが正確に進みます。どちらかの信号が強い場合は、航空機を右または左に向けて進路を修正する必要があります。

グライドスロープ送信機の動作原理も同様ですが、それぞれの「電界」はグライドスロープライン(着陸時に航空機が通る垂直軌道)に対して上下方向の位置の識別に使用されます。ローカライザー送信機と同じく、一方から強い信号を受信したら、パイロットは上下方向の速度を調整して航空機を元の軌道に戻します。

衛星を使った着陸

もう1つ、衛星測位システムを使ったGLS(GNSS着陸システム)という進入着陸システムがあります。これは、GPSやGlonassなどの衛星測位システムから取得した衛星座標に基づいて空中の位置を特定するテクノロジーです。

衛星を使った無線位置測定の精度は、着陸進入には適さないため、GBAS(地上型衛星補強システム)標識を地上に設置して高精度の信号を送信しています。

地上局は、衛星とは違って滑走路との位置関係が変わらず、航空機に近い場所にあります。そのため、航空機の位置座標の誤差は3 mを超えません。このシステムの利点は、価格が手ごろ(滑走路ごとに別々の標識を用意する必要がない)、信頼性が高い、グライドスロープラインに沿って航空機を正確に誘導できる、などです。

ご紹介した技術的なソリューションは、どれも利用可能な状態で、実際に運用されています。しかし、いつになれば完全な自動飛行が実現するのかはわかりません。理論上、必要な技術は現時点ですべてそろっていますし、実際に飛行システムからパイロットに制御権が移るのは緊急の場合だけなのですが。

問題は、緊急事態の際、電子機器に事態の収拾をすっかり任せるわけにはいかないことです。そのため、人間が航空機の操縦というプロセスから外されることは、当面ないでしょう。また、世界中の航空機を改修し、こうしたシステムを装備するには、巨額の資本投資が必要です。航空機の一機一機をパイロット不要の完全自動システムにアップグレードするのは、そう簡単ではないでしょう。