あなたも私も商品に:ビッグデータによるバーチャル人身売買

2016年5月12日

このご時世、情報は貨幣です。データは売買、盗難、改竄されるだけでなく、もちろん収集もされます。誰かのことを知りたいと思ったら、本物の情報をいくらでも合法的に見つけることができます。その方法さえわかっていれば。

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特別なソフトウェアを使えば、公開されているデータを簡単に分析できます。その気になったらどのようなことをオンラインで調べられるのか、見てみましょう。

オンラインで人探し

2016年4月、サンクトペテルブルク出身の写真家であるエゴール・ツヴェトコフ(Egor Tsvetkov)氏は、『Your face is big data』(あなたの顔はビッグデータ)という写真プロジェクトで人々の注目を浴びました(英語記事)。ツヴェトコフ氏は、地下鉄車内で乗客の写真を撮り、FindFace.ruという人気サイトにアップロードしたのです。FindFaceは、SNSサイト「VK.com」の公開ユーザーを写真から探し出せるサービスです。

ツヴェトコフ氏は、地下鉄で自分の前に座った人の写真と、その人がVK.comにアップしているプロフィール写真を、セットにして提示して見せました。高齢者の画像認識には手間取りましたが、検索の約70パーセントは成功しました。検索する中で、ツヴェトコフ氏は、赤の他人の生活について多くを知ることになりました。その人と直接話すこともないままに。

ロマンチックな側面もあります。VKアカウントを持っていれば、パーティで出会った気になる彼や彼女を、FindFaceを使って探し出すことができるのです。ほら、笑顔がステキなあの人を。しかし、現実的に考えてみれば、カメラを持つ人なら誰でも自分のことを見つけ出せる状況を喜ぶ人など、ほとんどいないはずです。自分のことを探すような人は、ネットいじめなどの良からぬ意図を持つ人かもしれませんから。もしかすると、次のような研究のためかもしれません。

世界最古の職業の「教育」機関

ロシアのオンラインメディア、Social Data Hubのチームは、売春におよぶ女性27,856人と男性1,387人に関するデータを集めるという、スキャンダラスなプロジェクトを実施しました(ロシア語記事)。このプロジェクトチームは、独自の顔認識技術を使って、これら男女のSNSアカウントを見つけ出しました。そして、SNS上の情報を基に、路上で客引きをしているのはモスクワ市内のどの大学の卒業生なのか、調査してランク付けしたのです。このプロジェクトで使われたデータはすべて、公開された情報源から得たものでした。

もちろん、この調査から引き出された結論が最終的に正しいとは言えません。使われたデータの男女比からは、女性に人気の専門分野を教える大学が優勢となりそうだということ、翻って、鉱物採鉱を教える大学がこの「研究」の1位にランキングされる可能性はまずないということがうかがい知れます。とはいえ、挑発には成功しました。

ネットワークの捕らわれの身に

SNSの威力は、これだけではありません。オンラインに何かを公開するとき、公開されている情報の断片からどんな全体像が浮かび上がってくるのか、私たちは明確にイメージできていません。たとえば、先に取り上げたSNSサイトのVK.comには、VK.com上でのつながりを可視化するサービスがあります。

下の図をご覧ください。この図には、友達の集団が2つあります。1つは私、もう1つは妹のものです。図の中の1つ1つの点は友達で、私か妹とつながっています。興味深いことに、私の友達と妹の友達が互いに知り合いでも、私たち姉妹の両方を知っているとは限らず、どちらか一方しか知らない人がいます。

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この図をよく見てみると、狙いを定めた人物を取り囲む親しい友達の環が見えてきます。この人物と友達は、皆が互いにつながっています。以下の図では、私の前職での同僚たちとのつながりがわかります。

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昔から「友人を見ればその人がわかる」と言われますが、今でもそれは変わりません。ある集団の中にいる人の大半が同じ趣味を持っていれば、あなたが狙いをつけた人も、おそらく同じ趣味を持っているでしょう。その集団に属する人がすべて同じ会社に勤めているのであれば、狙った人の職歴から1本の線が見つかるに違いありません。

このように、狙いの人の元カノ、元カレとおぼしき人物、家族、友人、同僚など、さまざまな興味深い情報がすぐに手に入ります。

このサービスは、ちょっとした話題作りのためのオモチャみたいなものですが、これと同じ目的を持つプロ向けのソフトウェアが存在します。こちらはさらに強力な機能を備えており、大量の情報を見つけることができます。

ガラスの水槽の中で暮らしている私たち。どうすればいいでしょうか?

街頭にどのくらいの監視カメラが設置されているか、自分がどのくらいの頻度でオンラインに写真を公開しているか、考えてみてください。それだけで、今の世の中では隠し事などできないことがわかるでしょう。前述の技術を利用すれば、写真1枚でその人をネット上で探し出し、その人のアカウントを分析して、人となりを詳しく知ることができます。もしかすると、手に入れたデータを使って、その人の伝記を書くことができるかもしれません。

ある個人について知れば知るほど、企業としては商品の売り込みや提案がしやすくなり、売れる見込みがアップします。実際に、各種企業はこうした情報を最大限に活用しているのです。

いまやSNSは、ネズミ捕り器に仕掛けられた無料のチーズのようなものです。最新の分析テクノロジーが、人間を本当の商品に変えてしまいました。しかし、いま起きていることをこのように解釈する人は、ごくわずかです。しかも、SNSは私たちの生活にとって便利で楽しいものなので、誰もこの角度から問題を検討しようとしません。でも、この問題は、どうにかして解決しなければならないのです。

大衆監視に対抗する方法は、いろいろあります。奇抜な髪形と特殊メイクで、顔認証システムを混乱させることができますし、カメラのレンズに向かって光を反射する衣服を着て、写真を台無しにするのも一案です。有名人や映画の登場人物のように、サングラスをかけてパーカーを着るのもありです。

いつかこういった手段を試してみたいものですが、とりあえず、SNSアカウントへのアクセス制限くらいはしておきましょう。また、オンラインでのプライバシー保護を強化する方法についても一読をお勧めします。

このほか、FacebookInstagramLinkedInTwitterのアカウントの保護方法を説明した記事もあります。これらの記事が、皆さんのSNSページを適切に保護する一助となりますように。きちんと手を打っておけば、皆さんの私生活がビッグデータの一部になることはないでしょう。