機内インターネットサービスの仕組み

2015年4月1日

飛行機内で一番苦痛を覚えるのは、飛行機恐怖症の人ではありません。インターネット中毒者です。この人たちにとって空の旅は、どれほどの苦痛なのでしょうか?想像してみましょう…何時間もの間、Facebookの炎上もInstagramの「いいね!」もSwarmのチェックインも、一切見ることができません。窓の外に美しい景色が広がっているとき、写真を撮ってもその場で投稿できません。こういう状況に耐えられない人のために発明されたのが、機内Wi-Fiインターネットアクセスだというわけです。

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利用者の視点から見れば、事は単純です。Wi-Fiホットスポット(珍しいケースだと携帯電話の基地局)があり、そこにログインし、接続すれば、ネットを使えます!ルーターを機内に設置するだけで済むことです。難しい話ではありません。しかし、実際何が重要かというと、この空飛ぶホットスポットをつなげる外部接続チャネルを確立することなのです。

飛行機をインターネットに接続するには、根本的に異なる2つの方法がある

チャネルを確立する方法は2種類ありますが、中身は根本的に異なっています。1つは、いわゆる Air-to-GroundATG)です。地上に基地局が建設されていて、アンテナが上空に電波を飛ばし、飛行機が受信して接続する仕組みです。

原理は、セルラーネットワークで使われるものと同じです。この場合は飛行機が空飛ぶ巨大な3Gルーターとなり、ハンドオーバーを駆使しセルラーネットワークに必須のトークンを利用しながら基地局から基地局へと途切れることなくネットワークに再接続します。周波数が異なるので、機内からセルラーネットワークに接続することはできません(そうする必要もないわけですが)。しかし機内のネットワークも、現在のモバイル業界のトレンドであるLTEへと移行していくでしょう。

このやり方には多くのメリットがあります。まず、サービスプロバイダーは既存のセルラーインフラを利用することができます。通常の基地局が置かれるスペースを借りるだけでいいのです。バックホール回線はもう用意されているので、ネットワークをごく短期間で国中に展開することもできるでしょう。これは米国やロシアのような大きな国にとってはうれしい話です。

こうしたプロジェクトはロシアで盛んに宣伝されていますが、モバイルの浸透度が比較的低いことから、採算性には疑問が残ります。一方米国では、このアプローチがすでに進んでいます。AircellGoGo)が160CDMA2000基地局を使って、全米を網羅するネットワークを展開しており、現在は飛行機1機あたり最大10Mbpsでの通信が可能です。AT&TLTEベースの別のATGネットワークを展開する予定です。

もちろん、ATGの基地局は、必ずしも普通のセルラー基地局ほど密集しているわけではありません。ただ、無線信号を遮る障害物がなく、配置に関するつまらない規制もないため、民間航空機が飛行する高度では、より広い範囲をカバーすることができます(基地局あたり最大100平方km)。

ルートがあらかじめ決まっているというフライトの性質も、このアプローチのシンプル化に貢献しています。飛行機は特定の目印の間を通る既定の空路を飛行するため、飛行エリア全体を均一にカバーする必要がなく、特定のルートで接続を利用できればよいのです。

とはいえ、Air-to-Ground接続にも1つ問題があります。海上では接続できないのです。そのため、海を渡るフライトでは、ネットワークに接続するチャンスがありません(こういうフライトを利用するときの方がインターネットを利用したいものですが)。しかし、衛星接続という解決策があります。

原理は単純です。静止衛星(地上に対してほぼ一定の位置を周回する衛星)が、飛行機と地上のインフラの両方に同時接続する中継装置の役割を果たすのです。こうした衛星1つあたりのカバー範囲は、最大で数十万平方kmに及ぶ場合もあります。現在、機内アクセスISPは容量を衛星事業者から借りています。たとえば、Inmarsat Global Xpress(やその他の衛星事業者)のディストリビューターにサービスを提供しています。

使用される周波数帯はサービスによって異なります。一般的に、周波数が高くなるほど、アンテナのサイズを小さくでき、信号の質がよくなります。そのため低周波帯(最大でも数GHz)は時代遅れと見なされており、新しい開発の多くにはKバンドKはドイツ語で「短い」を意味する「kurz」が由来。10GHz以上の帯域)が使われています。後者の特徴は、低コストと良好な接続速度です。

「良好な」接続とはこの場合、Kuバンドの約50Mbpsです。速そうに思えますが、1人の乗客が利用できる速度ではなく、飛行機1機が利用できる速度であるという点に注意しなければなりません。機体が長く幅が広い飛行機の場合、この速度を乗客約300人で分けることになるでしょう。

もちろん、機内でインターネットにアクセスしない人もいるでしょうが、100人の乗客がネットワークに接続したとすると、1人あたりの接続速度は0.5Mbpsとなり、メッセンジャー、メール、軽いWebコンテンツの閲覧など、ちょっとした作業にしか使えません。そのため、技術開発中である現段階では、ISP側はいまひとつのアクセス品質しか利用できないように規制しています。クライアントごとの速度を厳しく制限するか、従量課金制を敷いているのです。

この問題はKaバンドが解決してくれるでしょう。たとえばViaSatが提供するExede In The Airシステムでは、利用者1人あたり(飛行機1機ではなく)12Mbpsを利用でき、価格は従来のKuバンド技術の5分の1です。

Kaバンドブロードキャストは新たな収益源となり得るため、ISPにとっては価値あるソリューションです。たとえば、動画ストリーミング(テレビチャンネルのストリーミングなど)を提供すれば、ネットワークアクセスを売ることだけでなく、コンテンツ配信からも利益を得られます。思いつく例としては、スポーツ番組のストリーミングでしょうか。

利用者にとってはどんな意味があるのでしょう?高周波帯を得られるようになり、これまでと違う課金アプローチが採用されることで、高額な機内インターネットアクセスサービスが(完全に無料にならないとしても)手ごろで魅力的なサービスに変わります。そう遠くない将来にこれが実現すれば、飛行機の中でもずっとインターネットに接続できるようになるでしょう。これにはメリットもデメリットもありますが。