※2020年10月15日更新:iPhoneの設定説明を変更しました
近ごろのゲーム業界は、「まずは遊んで、支払いはそのあと」というビジネスモデルにシフトしています。ゲーム自体は無料でダウンロードできますが、ゲームを進める中で魔法の石や武器などの「アイテム」を手に入れるには、お金を払わなければなりません。そんな中、子どもが親のクレジットカードを使ってアイテムなどを買い、何十万円も使ってしまったという事例がいくつも報告されています。
2015年3月、Xboxで遊んでいた少年がゲーム内購入で4,500ドル(50万円強)も使ったというニュース(英語記事)に、ネットは騒然となりました。同じような話は2014年秋にもあり、10代の子どもが『Game of War: Fire Age』というフリーミアムゲーム(基本料金は無料で、特別なアイテムや機能は有料であるタイプのゲーム)に46,000ドル(510万円強)もつぎ込んでいました。2013年には、『Zombies vs Ninjas』で遊んでいた5歳の男の子が、わずか10分で1,700英ポンド(20万円強)も使ってしまいました!
上記の事例で子どもたちがゲーム内購入に使った金額は、いずれも数十万円から数百万円のレベルです。一方で、ネット上のフォーラムなどでよく見かける「うちの子どもがゲームでお金を使い込んだ」という悩みの内訳を見てみると、数万円レベルがほとんどです。この程度の金額ではメディアを驚かすには至らず、大きく取り上げられることはありません。しかし問題は、親の知らないところで子どもが数万円を使っているという事実です。
なぜこのようなことが?
さて、なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
昔から「ただより高いものはない」と言います。資金や労力をつぎ込んで作ったゲームを無料で使ってもらう、というのはビジネスとして成り立ちません。仕事に対する対価が支払われるのは当然のことです。現実的な話をすると、ゲーム開発者の収入経路は2つあります。1つはゲームの利用者を通じた経路、もう1つはゲームやWebサイトに広告を出す第三者企業を通じた経路です。どちらか一方から利益が得られればよしとする開発者もありますが、たいていは両方の経路を利用しています。
ゲーム内購入は、ゲーム開発者にとって確実な収入源です。ゲーマーはアイテムの購入、ボーナスの利用、次のレベルへ進むためなどにお金を払います。支払いには、仮想通貨も実際の通貨も使えます(あらかじめ、実際の通貨を換金しておかなければならない場合もあります)。ゲーム内購入は、無料ゲームでも有料ゲームでも使われるので、子どものタブレットに有料ゲームをインストールしたからといって、それ以上お金がかからないとは言い切れません。
子どもがゲームにお金をつぎ込んでしまった事例では、自分が実際のお金を使ったのだということを子どもが理解していなかった、とよく指摘されます。クリックすれば特に確認を求められることなく購入できるのであれば、無理もない話です。
それに、ゲーム内購入はゲーマーにメリットをもたらします。たとえば次のレベルに早く進めるとか、キャラクターを強くできるとか、レベルクリアのヒントがもらえるとか。ゲーム内購入のあるゲームの多くは、無料でも定額(ゲーム購入時に支払う金額)でも十分にプレイできます。しかし、忍耐力がなく好奇心が強い子どもは、もっと早く上手いことゲームを進められるよ!という誘惑につい反応してしまうのです。
ではどんな対策が?
すでに支払ってしまった場合
最近では、親のAppleアカウントやGoogleアカウントから子どもが無断で購入したことが発覚し、支払先の企業に申し立てた結果、返金してもらえたという事例が見られます。
親の知らないところで子どもがゲーム内購入に大金をつぎ込んでしまった場合、この方法でお金を取り戻すしかありません。ゲーム開発会社にとっては特に珍しい話ではなく、また事情も十分に理解できるということで、返金に応じてもらえることもあります。
しかし、企業の善意ばかりを当てにしてはなりません。親には、子どもと話し合い、教育し、先回りして対策を立てる責任があります。それに、申し立てが必ず認められるとは限りませんし、金銭的損失の絡む問題には大きなストレスが伴うものです。
また、PCやゲーム専用機でゲーム内購入につぎ込んだお金の払い戻しについては、法律で厳密に規制されていません。その一方で、ゲーム内での少額購入は目立って増加しています。
ゲーム内購入を制限するためのヒント(すべてのデバイス向け)
では、子どもが勝手にゲーム内購入してしまわないようにするには、どんな手立てがあるでしょうか。
- どんなデバイスでプレイする場合でも、子どもがゲームに使うアカウントに親のクレジットカードを紐付けるのはできるだけ避けましょう。こうしておくだけでも、ゲーム内で勝手にお金を使われるのを防ぐことができるかもしれません。しかし、クレジットカードの紐付けをしないわけにはいかない場合があるでしょうから、その場合は以下に述べるヒントをすべて実践するようにしましょう。
- ゲーム内購入で支払われるのは本物のお金であることを、子どもに説明しましょう。「子どもがゲームに多少のお金を使っても問題ない」というスタンスであったとしても、お金を使いたいときには必ず先に親へ相談するように約束させてください。「ダウンロードしてもいいのは無料のものだけね」「1か月に1000円までなら使っていいよ」という言い方だと、自分が使っているのは親のお金なのだということがきちんと伝わらない可能性があります。
- 重要なのは、「ゲームにお金を使うのは構わないけれど、使う額はゲームの価値に見合ったものでなくてはならないし、当然、家計に見合ったものでなければならないのだ」と理解させることです。しかし、こうした判断を子どもに任せるには無理があるので、大人がその都度アドバイスしましょう
- 1種類のフリーミアムゲームにお金をかけるよりも、有料ゲームを何種類か購入した方がお得な場合があります。複数のゲームを購入することにした場合は、子どもと話し合ってゲームを選び、まとめてダウンロードしましょう。ただし、ゲーム内購入付きの有料ゲームもありますのでご注意を。
- 対戦型ゲームには十分に注意してください。このタイプのゲームにはゲーム内購入がつきもので、しかも往々にして購入の必要に迫られます。コンピューターと闘うよりも、ほかのプレーヤーを相手にして勝つ方が満足感が大きいもの。対戦に有利なものをお金で買うチャンスがあれば、つい手が出ます。大人でもそうなのですから、小さな子どもや10代の子どもは言うまでもありません。勝つためにはゲーム内購入が大前提というゲームばかりではありませんが、お金を払ってアイテムを追加しなければなかなか勝てないゲームもありますから注意が必要です。
- デバイスの設定やゲームの設定など、技術的な手段を使ってゲーム内購入を阻止しましょう。ただし、何もかもテクノロジー任せは禁物です。親もゲームの操作方法を理解し、追加アイテムを購入せずに遊ぶ方法を子どもに説明しましょう。しかし残念ながら、ある程度のレベルまで達すると、どうしても倒せないボスキャラなどが立ちはだかり、先に進めなくなることがあります。こういうゲームはゲーマーを食い物にしているとも言えますから、いっそのこと止めてしまってはいかがでしょう。
勝手に課金されないようにするには
PCの場合
PCゲームには、ブラウザーから直接起動するブラウザーゲームと、セットアップが必要な従来型のゲームの2種類があります。
ブラウザーゲーム
ブラウザーゲームの大半はフリーミアムタイプで、ゲーム内購入の機会が山ほどあります。この点はソーシャルゲームも同じです。このようなゲームの根底にあるのは、プレーヤー同士の熱い競争心です。この競争心が、終わりなきゲーム内購入へと駆り立てるのです。
ゲーム内購入を防ぐには、クレジットカードが使われないようにするのが一番。ブラウザーゲームをカードに紐付けるのを避けましょう。「次のレベルへ行くためにどうしても必要なアイテムを1回だけ」のつもりでも、クレジットカードを使ったらカード情報がプログラムに記録され、次回からはカード情報を聞かれなくなります。つまり、あなたが関与しなくても、次の購入ができてしまいます。
従来型ゲーム
スタンドアロンでダウンロードしてセットアップするという昔ながらの方式のPCゲームが多いのですが、Steamのようなゲームストアを通じて配信されるものもあります。ゲームストアから配信されるゲームを利用する場合、ゲームのデモやダウンロード、決済、ゲーム内購入などを行う特別な「ストア」がPC内にインストールされます。
ゲーム内購入について言えば、従来型のゲームもブラウザーゲームも違いはありません。SteamやOriginsのようなストア経由で配信されるタイプのゲームについては、以下の対策を講じて確実にコントロールしましょう。
- 親と子で別々のアカウントを使いましょう。子どものアカウントに親のクレジットカードを紐付けることはしないでください。子どものためにゲームを購入するときには、「ギフトとして購入」のオプションをメニューから選択して、ゲームをプレゼントしましょう。また、「ファミリーシェアリング」のオプションを使用すれば、同じコンピューター上の親のアカウントで購入した一部のゲームに子どもがアクセスできるようになります。
- クレジットカードは子どもの手の届かないところに保管しましょう。
AppleデバイスとAndroidデバイスの場合
モバイルゲームは、有料のゲームでもゲーム内購入をサポートしていることがよくあります。子どもが自分のデバイスを持っている場合は、子ども用のアカウントを設定しましょう。親のクレジットカードを子どものアカウントに紐付けてはなりません。何か購入するときは親のアカウントを使うようにしておけば、それだけでも子どものゲーム内購入を十分に防ぐことができるはずです。
子どもが親のデバイスを使ってゲームする場合や、親のクレジットカード情報を知っている場合は、他の安全策を講じましょう。AppleデバイスとAndroidデバイスには、アプリ内購入を防止する機能があります。
Appleデバイス
[設定]-[スクリーンタイム]の順に選択し、スクリーンタイムをオンにします。子ども用のiPhoneの場合は[これは子ども用のiPhoneです]をタップし、画面の表示に従って必要事項を設定していきます。途中でパスコードの作成を求められます。パスコードは、親にとっては覚えやすいけれど子どもには推測できない程度に複雑なものにしてください。言うまでもないことですが、子どもが見ていないときにパスコードを入力しましょう(ここが一番難しいところですが)。
スクリーンタイムの設定の中に[コンテンツとプライバシーの制限]があります。これをクリックし、さらに[コンテンツとプライバシーの制限]というボタンをクリックしてオンにします。[iTunesおよびApp Storeでの購入]-[App内課金]の順に選択し、[許可しない]を選択してください。
このほか、Apple製品には「ファミリー共有」オプションが用意されています。子どもにAppleデバイスを持たせている親には便利な機能です。この機能を使うには、親が子ども専用のApple IDを登録し、子どもを「ファミリー」ユーザーグループに追加する必要があります。「ファミリー」メンバーが購入するときには、グループリーダーのクレジットカードが使われます。つまり、子どもが購入しようとすると、親に承認リクエストが送られます。これは有料、無料のアプリにかかわらず、すべてのコンテンツに共通です。
Androidデバイス
Google Playに進み、左上にあるメニューアイコンをタップします。次に、[設定]を選択し、[購入時に認証が必要]オプションをオンにしてから、パスワードを設定します。先ほどのAppleの例と同じように、覚えやすいけれど、子どもが推測しにくいパスワードにしてください。
ゲーム専用機の場合
今どきのゲーム専用機は、ペアレンタルコントロール機能を備えています。メニューから必要なセキュリティ設定を適用すると、ゲーム内購入や成人向けゲームへのアクセスを制限できるほか、ゲーム時間を制限することもできます。ただし、ペアレンタルコントロールのパスワードを入力するときに大型ディスプレイのスクリーンキーボードを使わなければならないという問題があります。パスワードを入力している間、子どもを別の部屋に行かせる以外に方法はなさそうです。
子どもがゲーム専用機で遊ぶようになったら、子ども用のアカウントを設定しましょう。ペアレンタルコントロールを適用すれば、親がゲームをするたびにゲーム機を再設定する必要がなくなります。
現在市販されているゲーム専用機には、利用者アカウントを管理するためのメニューがありますので、そこから必要な設定を行いましょう。
まとめ
最近のゲーム業界の傾向を見ていると、「ゲームのダウンロードは基本的に無料。ただし、追加アイテムの入手には購入が前提」という流れができているようです。そのため、追加アイテムを手に入れるたびに実際にお金を使っていることを子どもが理解していない場合があります。理解していたとしても、購入手続きが簡単なために、ついついゲーム内購入でお金を使ってしまいます。
親が取れる手立てはいくつかあります。ゲームやデバイスの設定を利用したり、子どもと話し合ったりして、意図せぬ課金を防ぎましょう。
備えあれば憂いなし。ゲームで大金を使い込まれる危険性について知っていれば、子どもにゲームを禁止しなくても家計へのダメージを防ぐことができます。
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