今月の初め、このブログ『Kaspersky Daily』では「デジタル健忘症」という傾向についての記事を載せました。アンケート調査によると、米国人の91%、ヨーロッパ人の79.5%が、覚えていてもよさそうな情報を記憶せず、スマートフォンに保存したりすぐスマートフォンで調べたりする傾向があるとの結果でした。つまり、ほぼ自分の脳の延長のような状態になっている、というのです。
続く今月半ば、とあるアメリカ人が「24時間スマートフォンなしで過ごしたらどうなるか」のチャレンジについて記事を書きました。客先へ行くのに行き方がわからなかった、支払いができなかった、会社宛ての電話をスマートフォンに転送する設定だったので外出中は完全に連絡の取れない人になっていた、ランチに同僚といったらみんなスマートフォンで何かしていてすごく手持ち無沙汰だった、義母の誕生日だったのに連絡しなかったので妻に怒られた、など散々な1日だったようです。
日本人の場合はどうなんだろう。
自分の記憶を掘り起こしてみたところ…あった。ありました。妹の家に遊びに行くことになっていた日、スマートフォンを持たずに家を出てしまったことが。妹は引っ越したばかりだったので、とりあえず最寄り駅までは行けたものの、そこから先がどうにもなりませんでした。まず、妹の携帯番号がわからない。当然、新居の番号もわからない。別の妹に聞こうと思ったけど、そっちの番号もわからない。自分の夫なら知っているかと思ったけれど、なんと!夫の携帯番号の下4桁が思い出せない。幸いなことに、実家の電話番号は覚えていたので、駅周辺で公衆電話を探し、親に聞いてなんとかなりました。公衆電話がなかなか見つからないわ(焦っていると余計に見つからないのが探し物)、小銭がなくてコンビニで買い物をしてくずさなきゃいけないわ、親に笑われるわ、かなり残念な感じではありましたが。
自分の場合は、完全にスマートフォンがアドレス帳代わりでした。思い出せる電話番号は、自宅と実家、それから自分の携帯、以上。会社の電話番号も出てこないし、なにより夫の電話番号が思い出せないのは致命的です、緊急時に連絡が取れないではないか。
そういえば、SNS上で「連絡先が飛んでしまいました。お手数ですが友人の皆様、連絡先を再度教えてくださいm(__)m」という投稿を何度か見かけました。かくいう私も、似たようなことをやった経験があります(アドレス帳のメンテを誤って一部連絡先が消えた&どこにもバックアップやメモが残っていなかった→個別に改めて聞いて回った)。今では、大事な番号はメモしてあります。
コンピューターやスマートフォンは、私たちの記憶を肩代わりしてくれます。それが私たちにどんな影響を及ぼしているのか?調査しました。https://t.co/vR8z35ljcr pic.twitter.com/8nGLp1l61n
— カスペルスキー 公式 (@kaspersky_japan) July 3, 2015
ほかに困ることといったら何だろう。そこで、社内の人に手当たり次第きいてみました。
「スマホがなかったら、ですか?まず、電車に乗れないです(笑)」と笑いながら答えてくれたのは、マーケティングのKさん。モバイル定期利用者です。買い物もスマートフォンでタッチ決済なので、けっこう不便に感じると思う、とのことでした。「人と連絡が取れなくなるのがマズいです」とはサポートのYさん。仕事上のことは会社の電話とPCでなんとかなるけれどプライベートな連絡に関してはほぼアウト…同じ意見はほかにも複数ありました。「外出先で、会うはずの人と会えなかったとき、どうやって連絡をつけたらいいかわからない」という意見もありました。そういえば、私は携帯電話のない時代を経験していますが、その頃は待ち合わせ場所に相手が来なくてもけっこう長い時間待ったりしたものです…私は待つのが苦手な方ですが、それでも30分は待った気がします。今思えば、時間をつぶせるスマートフォンがない時代によく待ったなあ、と!当時は、待ち合わせの時は待ち合わせ場所を細かく指定し(渋谷駅南口モヤイ像の改札寄り、とか)、会えなかったときはこうする、というプランBまで決めていたりしていた気がする。携帯を持つようになってから「じゃあ12時くらいに渋谷の南口あたりで」というざっくりした待ち合わせに変わったような…すみません話が逸れました。
「携帯とかスマホとかない時代を知っている人は、1日くらいスマホがなくてもなんとかなると思うよ」との意見は営業のMさんです。スマートフォンでの連絡ができない状態になっても、会社と連絡がつけば誰かに助けてもらえるし、そもそも社内にいればそれほど困らない(他に通信手段がいろいろある)、ということのようです。「むしろ若い人のほうが困るんじゃないの、学生とか20代とか。スマホやケータイ以外でのやりとりをあんまりしてないんじゃないの?」「あとは職種によると思うなあ。外回りの多い営業なんかだと、やっぱり困ると思うよ」
では、若い人に聞いてみましょう。営業のNさん(20代)です。「僕、そんなに困らないです」と、拍子抜けするほどあっさりと返事が返ってきました。「外出のあるときは前もって地図をプリントアウトしてあるし、必要なものは準備してあるから…あ、でも電車の乗り換えはアプリに頼っているので、それが一番困ります」えらい!しっかりしているなあ。話を進めるうちに、Nさんはふと「海外に住んでいたとき、電話機能のみの携帯しか持ってなかったので、スマホがない状態に慣れてるかもしれないです」とポロリ。ああ、なるほど、スマートフォンのない生活を知っている人だったのか。そんな彼でも、家を出たときにスマートフォンを忘れたことに気づいたら「すぐ取りに帰ります!」と言います。さきほど登場したMさんも、「だいたい、スマホ忘れた!と気づいたらまず家に取りに帰るよね」と言っていました。しかし、Nさんはちょっと困った顔をしています。「忘れたら取りに帰るんですけど、…ないと困るから取りに帰らないと!って感じではないんです。何も考えずに、というか…」「持っていることが当たり前すぎる、ってとこですか?」「そんな感じなのかなと思います」
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自分を含め、一番問題になるのは「連絡先がわからなくなること」でした。1日くらいなくても何とかなるにしても、無くしたりデータがとんだりした場合は、バックアップを取ってあるかどうかで「困り度」が変わってきます。別のデジタル手段でも、手帳でも、なんでもいいのですが、バックアップはきちんと取っておいた方が安心だと思いました。
そういえば「スマホを置き忘れて他人に中身を見られると困る」と答えた人も何人かいました。うちのカスペルスキー インターネット セキュリティ for Androidには遠隔でスマホをロックしたりデータ消去したりする機能がついてますよ、と言ったら、にやりとしていました。
日常に溶け込みすぎてありがたみを自覚しにくい #スマートフォン #DigitalAmnesia
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印象的だったのは最後に話を聞いたNさんの「どうしてスマホがないと!と思ってしまうのかがわからない」という言葉でした。スマートフォンが日常に完全に溶け込んでいることを端的に示す言葉のような気がしました。私もスマートフォンを家に忘れて出たことは、先に書いたとき以外にも何回かあります。だいたいは帰宅するまで特に困らずに済んだのですが、何となく不安で落ち着かない感じが一日中拭えませんでした。それほど、この「ちっさいコンピューター」は自分の一部になっている、ということなのかもしれません。