ティーンエイジャーとゲーム:過剰な課金をさせない方法

PCゲームには、どういった課金ポイントがあるのでしょうか?過剰な課金への対策は。

子どもは大人のようにはお金の使い方を抑制できません。特にクレジット決済を利用していると、本物のお金を使っている感覚が抜け落ちてしまいがちです。ゲームに夢中のティーンエイジャーが状況をよく理解しないまま数十万円も課金してしまい、クレジットカードの請求額を見た両親が仰天したという話もあります(英語記事)。クレジットカードを目につくところに置きっぱなしにしておくと、ゲーム好きの子どもの手に渡り、思わぬ事態が生じるかもしれません。

子どもたちはゲーム内で何を購入しているのでしょうか?将来eスポーツのスターになるかもしれない子どもたちが過剰な課金に手を染めることがないように、親として何ができるでしょうか?

ゲーム開発元はどこから利益を得ているか

ゲームを購入してしまえばそれ以上の出費はないと思われるかもしれませんが、そうした誤解は高く付く可能性があります。ゲーム自体ではないところから利益を得ているゲーム開発元は、かなりあります。インストールは無料でできるけれども、あらゆる種類の追加課金が発生するゲームもあります。では、どんなところが課金ポイントなのでしょうか?

ゲーム内通貨

ゲームの世界では、現実世界の円やドルと同じように、ゲーム内通貨が使われます。ゲームの中では、お金があればあるほど有利です。気を付けたいのは、いつでも好きなときに本物のお金を仮想通貨と交換できるという点です。子どもがゲームアカウントの残高に何回か追加しているうちに、親の銀行口座の残高はどんどん減っていきます。

ゲーム内アイテム

このほか、多種多様な武器、防具、装備にもお金が使われます。プレイヤーのアバターが着る服も課金対象です。ティーンエイジャー(13歳~19歳)の子どもたちは、キャラクターの性能を高めるため、または自己表現として、そうしたアイテムを購入します。中には高額なアイテムもあり、例えば『ディアブロIII』の「反響する憤怒(Echoing Fury)」という武器は、一時期1万4,000ドル(約150万円)で売られていたことがあります(英語記事)。

ゲーム内アイテムのうち特に注意したいのは、ルートボックス(いわゆる「ガチャ」)です。ルートボックス(ガチャ)とは、複数の仮想アイテムがランダムに入った宝箱です。宝くじと似て、プレイヤーは当たりが入っていることを期待しつつ、中身が分からないままに箱を購入します。運がよければゲームの流れを一変させるアイテムが入っているかもしれませんが、そうでなければ大したことのないカスタマイズ機能が手に入るだけかもしれません。ルートボックスには、ゲームごとに独自の名前が付いている傾向があります。例えば、サッカーゲームの『FIFA』では「パック」と呼ばれています。パックにはメッシやロナウドといったプレミア級のスター選手が入っている可能性もあれば、小さな町のクラブに所属する並の選手が入っている可能性もあります。当然ながら、後者が入っている可能性の方がはるかに高く設定されています。

ブースター

人生であっても、ゲームであっても、名声や富を得るための道のりは険しいものです。そのため、キャラクターをレベルアップさせるために何時間も費やしたくない人は、プレイヤーの競争力を一時的に高める最適化ツールを買うことを選びます。いわゆる「ブースター」や「タイムセーバー」と呼ばれるツールです。例えば、ブースターでキャラクターの強さや俊敏性がすぐにアップしたり、よい戦利品を入手しやすくなったりします。

じゃまな広告

画面の半分を覆うバナー広告や、セッションを何度も邪魔してくる動画クリップの煩わしさは、ゲームをしない人にもおなじみです。ゲームの開発元は広告から収益を得ているため、一定の金額を支払えば広告が表示されなくなるようになっていることがよくあります。お金を払ってしまえば広告はそれ以降表示されなくなりますが、ゲームによってはサブスクリプション方式で支払わなければならないこともあります。

落とし穴と法律

誠実な開発元は、プレイヤーの心理を操作しようとはせずにゲームを販売していますが、さまざまな心理学的手法を用いて課金させようとする開発元も数多く存在します。

倫理観が強くない開発元の中には、カジノの胴元並みの手口を使うところもあります。「レアアイテムが当たるかも!」と運試しを誘い、実は人気アイテムが手に入る可能性は限りなくゼロに近かったりします。こういった心理操作にはまってしまうと、欲しいアイテムが手に入るのではないかと、さらに多額のお金を、さらに頻繁に課金するようになっていきます。大人のゲーマーでも、こういった心理状態に引き込まれてしまうことがよくあります。

また、キャラクターを鍛えてゲームを先に進めるために、単調なタスクを何度も何度も繰り返さなければならないように意図的に設定されていることもあります。そうなったときは決まって、進捗バーの近くに何かアイコンが表示されます。そのアイコンをクリックするとブースターを購入できるようになっているというわけです。

時には、勝つためにはアイテムを購入するしかないこともあります。例えば、どれほどゲームがうまい子どもであっても、貴重な道具を持っている対戦相手には簡単に負かされてしまうかもしれません。そこで、同じアイテムを購入しなければ!という心理的プレッシャーが生まれます。課金すれば有利になるようなゲームのシステムを、業界用語では「Pay To Win」と言います。

課金を誘う方法は、まだまだあります。例えば、ゲームを固定価格で販売した上で、購入済みのコンテンツに対して(またはゲームを続けてプレイする権利に対して)サブスクリプション方式での支払いを求めるなどです。

多くの専門家は、かねてからこうした現状に非難の声を上げています(英語記事)。例えば、英国の国民保険サービス(National Health Service :NHS)は、ルートボックスは子どもたちにとってギャンブル依存の入り口となっているとの見解を表明しました。米国では、ルートボックスのあるゲームに18歳以上のレーティングを付ける動きがあります。日本では「コンプリートガチャ」が禁止されました。ルートボックスを禁止する法律は中国、オランダ、ベルギーには存在しますが、多くの国ではいまだに規制されていません。こういった誘惑に子どもが負けてしまわないように、親としても対応が必要です。それでは、過剰な課金をしてしまわないための対応について、この後みていきましょう。

ゲーム内購入への対応

ゲーム内で子どもたちが何にお金を使っているかを知れば、子どもと同じ言葉で話ができるようになります。あとは、どのようにして我が子を守り、お金を浪費させないようにするか(それも、信頼を失わずに)です。

ゲームを一切禁止する

一番過激で一番効果が低い方法は、ティーンエイジャーの子どもにゲームを一切禁止することです。こうすれば親子関係が確実に悪くなり、むしろ親に隠れてゲームをするようになります。逃げ道のない状況に置かれた子どもは、友だちの家でゲームをしたり、親のスマートフォンやコンピューターの中でパスワードを探したり、2台目のスマートフォンを持ったり、さまざまな手を尽くすことでしょう。

そこまで対立するほどのことでしょうか?考えてみると、ゲームをプレイすること自体は悪くないのです。ゲームは、子どもたちが人付き合いをし、最新のテクノロジーについて学び、さらには将来何をしたいかを考えるきっかけになることが期待できる立派な趣味です(英語記事)。

今の子どもたちは、プログラミング言語を自分で学び、ゲームを自作したりしています(英語)。隣の部屋で画面に張り付いてモンスターをやっつけている子が、将来は有名IT企業のトップになる可能性だってあるのです。

親のお金に手をつけられないようにする

ゲームが好きな子だからといって、必ずしも親のお金を浪費することになるとは限りませんが、用心のため、クレジットカードや決済可能なスマートフォンには手を触れさせない(目につくところにも置かない)ようにすることをお勧めします。また、スマートフォンの画面ロックがかかるまでの時間を短く設定し、決済確認コードの通知は無効にしてロック画面に表示されないようにしましょう。

子どもアカウントを作成する

PlayStation StoreXbox Games Storeなどデジタル配信プラットフォームの多くでは、子どもアカウントを設定できるようになっています。スクリーンタイムの制限や不適切なコンテンツや大人向けコンテンツのブロックといった基本的なペアレンタルコントロールの機能を利用できるだけでなく、購入できないようにしたり、支払いの限度額を設定したりすることもできます。主にスマートフォンでゲームをしている場合は、AppleGoogleのファミリーアカウントでアプリ内購入を制限しましょう。

子どもと話し合う

子どもからお金を隠さなければならないと感じないで済むためには、対話しながら話を進めることが重要です。子どもがどうしたいのかを理解しようと努め、好きなゲームについて語り合い、どんなことをしたい、何を買いたいと思っているのかを知るようにしましょう。話についていくことができれば、子どもの関心事に親が本当に興味を持っていて真面目に取り合っているのだということが伝わるはずです。そうすることで信頼関係を築きやすくなり、ゲーム以外のずっと意義深いお金の使いみちを提案することもできるようになります。

家庭の予算に応じて、バーチャルな何かを買う代わりに、これならお金を使ってもいいと思えるような現実のものを使いみちとして提案してもいいでしょう。ブースターにお金を使うよりも新しいゲーミングマウスやヘッドフォンを買った方がいいのではないかという言い方なら、ずっと伝わりやすいかもしれません。

お金の使い方を学ばせる

子ども用のカードを用意し、少額のお金を入れておいて、お金の使い方を管理することを教えましょう。これまでお小使いをあげていなかった場合は、この機会に始めるのもいいでしょう。使い方は自分で決めさせます。ゲームに散財すればコンサートのチケットや新しいスニーカーを諦めなければならなくなると早いうちに学べば、予算配分を考えて賢くお金を使うことをそれだけ早く学ぶようになるでしょう。

深刻な影響が生じている場合の対処法

ティーンエイジャーの子どもがすでに多額を課金してしまっている場合は、どうすべきでしょうか?

  • 銀行に連絡して取引の取り消しを依頼する。お金を取り戻せるかどうかには複数の要因が関わってくるので、迅速な行動が肝心です。
  • ゲームのサポート窓口に問い合わせて返金を依頼する。開発元としては、返金に応じても総収益に比べれば微々たるものですから、わずかな金額のために自社の評判をリスクにさらすことを避けるため特別対応に応じてくれる可能性があります。
  • 問い合わせのときは必ず、カードが未成年の子に許可なく使用されたと言うようにしましょう。その金額、または少なくとも一部を返金してもらえる可能性があります(英語記事)。

子どものオンラインアクティビティを把握する方法

心配事の原因は、ゲーム内購入だけではありません。ゲーム以外にも子どもがオンラインで何をして楽しんでいるかに関心を示し、どういったWebサイトを見ているのか、どんな相手とチャットをしているのか、それとなく聞いてみましょう。また、セキュリティの基本事項を教えましょう。それから、よくある詐欺の手口や、嫌がらせやいじめへの対処法ゲームアカウントをサイバー犯罪者から守る方法を説明してあげてください。

カスペルスキー セーフキッズ(Android、iOS)は、ネットワークセキュリティの基本事項を子どもたちに教え、不必要なリスクから子どもたちを守るのに役立ちます。親が子のオンラインアクティビティを把握しやすくする機能を備えているだけでなく、ティーンエイジャーの子どもと話し合い理解する上で役立つ児童心理学者からのヒントも提供しています。

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