#BionicManDiary(エピソード8):未来の仕事に思いを巡らす男

身体にマイクロチップを埋め込んだKaspersky Lab社員。今回は、将来的に普及しそうな21の職業を考えます。

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1年ほど前、私は手にマイクロチップを埋め込み、大実験の旅に乗り出した。その目的は、未来の「コネクテッドヒューマン」のライフスタイルを理解し、何がうまくいかないのかを誰よりも早く経験することだ。私は見たこと、感じたことを書き留め、このブログで公開した。かくして、#BionicManDiaryは生まれた。

このエピソード8では、今はまだ概念に過ぎなくても、明日には大ブレイクするかもしれない職業についてお話ししよう。

1. DNAエンジニア

そう、この職業はすでに存在している(英語記事)。もっとも、私が近い将来に期待しているものに比べれば、まだ発展途上だが。現在のDNAエンジニアは、DNA工学を使って生理学的な問題に取り組もうとしている。わずか1グラムのDNAに700テラバイトの情報が入っているのだ(英語記事)。これほど巨大なデータの塊を扱う実験は、永遠に終わらない可能性がある。16個の文字や記号からなるパスワードの解読には、最新のコンピューターで1万世紀かかるといえば、このデータの大きさをわかっていただけるだろうか。700テラバイトの解読にどのくらいかかるか、想像して欲しい!ごく近い将来、さまざまな用途に合わせて理想的な組み合わせのDNAを専門的に構築できる人材は、ひっぱりだこになるだろう。

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2. 臓器ブリーダー

現在、実験室では11種類の身体部位を培養できる(もちろん、生殖器も。すごい話だ)(リンク先は英語記事)。3Dプリンターを使えば、ほぼなんでも印刷できる。ロケットのスペアパーツですらプリントできるのだから(英語記事)、移植用の臓器は言うまでもない。生体移植組織の設計や生成はこれから3~5年のうちに規模が拡大し、ひいては人間臓器ブリーダーという新しい職業が生まれる確率はかなり高いのではないか。こうした専門家が医療や研究のニーズに応えて、身体の部位や臓器を培養したり、プリントしたりするだろう。

3. 火星移住者

イーロン・マスク(Elon Musk)氏は、火星にコロニー(居留地)を作ることを真剣に考えていて、2018年には(もうすぐだ)人類が初の有人火星探検に乗り出すとみている(英語記事)。もっとも、移住者の大半は片道切符の旅となるだろうが。
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4. 宇宙船の客室乗務員

一般人が宇宙船に乗り込むようになったら、乗組員の仕事は多少増える。乗客の面倒にはプロの手が必要になるだろう。乗組員は適切な訓練を受けて船内の安全を確保する必要があるだろうし、宇宙船の主な装置やエコシステム、インフラを管理できなければならない。また、心理学的な技能も必要だろう。

5. 惑星間通信エンジニア

火星からの信号が地球に届くまでには平均15分かかる(厳密にいえば、地球から火星までの距離に応じて3~22分)。地球から火星に信号を戻すのに、さらに15分。Netflix?無理、無理。ごく普通のインターネットアクセスも、深刻な問題になる。この問題は、すぐにでも解決しなければならない。そのためには、これまでにない分野の専門家が必要で、その専門家が通信用の新たな基本アーキテクチャを構築することになるだろう。たとえば、最初のうちは最優先データの「ダンプ」をインターネット経由で火星に送ろうとするだろうが、そのうち、火星専用の独立したインターネットを開発して、本当に重要なデータだけを地球上のインターネットとやりとりするようになるだろう。

6. コロニーの取り締まり機関

テラフォーミング(惑星の地球化)の第1フェーズでは、警察や軍隊の組織は必要ないだろう。しかし、コロニーの人口が、たとえば100人を超えたら、保安官が絶対に必要になる。その後、人口が100万人単位になると、ついには国家権力や軍隊を必要とするだろう。個人的には、英国と米国のようなシナリオを想定している。いずれ火星でも地球でも平和に暮らすことができるだろうが、そこにたどり着くまでは、わだかまりをなくしていく必要があるだろう。

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7. 宇宙鉱山員

NASAによると、地球付近にある小惑星帯は、110万から190万個の小惑星と数百万個のさらに小さな極小惑星から形成されている。ほとんどの小惑星に抽出可能な資源があり、水もその1つだ。さて、考えてみよう。何kmにもわたる巨大な金、プラチナ、ウラン、プルトニウム、亜鉛などの元素の塊がその辺を漂っている。こうした資源のかけらが、地球上のあらゆる国家の準備資産の合計とほぼ同等の価値があるかもしれないのだ。小惑星上の採鉱場はすでに関心を集めている。2025年までには、このようなプロジェクトが現実となっているかもしれない(英語記事)。

もちろん、作業の大半は自動化されるだろう。それでも、この作業には人間が必要だ。経済的には、宇宙空間に積み直し用の小さなターミナルを設け、物流を最適化するのが賢明だ。水産業も同様だ。海上に浮かぶ本格的な施設に労働者の家族を住まわせる。基本的に、未来の夢見る遊牧民にはさまざまなチャンスがあると思う。土星までヒッチハイクして超高価な鉱物を掘り出し、Weyland-Yutani社のような一流企業に売りつけるのだ。

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8. 海上都市の入植者

コロニーに適した場所は、遠く離れた惑星だけではない。ここ地球にも、まだまだ活用できる場所がある。先日、面白そうなプロジェクトを思いがけず発見した。海上都市のプロトタイプだ。この才気あふれる都市工学のアイデアとは、再生可能エネルギーだけを動力とする摩天楼だ。ちなみに、このようなプロジェクトはすでに10数件ある(英語記事)。近い将来、このようなコロニーが登場することは間違いない。プロジェクトの実現に必要なものは、ちょっと変わった億万長者の強力な意志と情熱のみである。イーロン・マスク氏のような。

9. ソーラーエンジンの建設業者

石油会社の先行きは見えている。タバコ会社も。私は、人々のマインドセットの変革に挑むイーロン・マスク氏を熱烈に支持している。私たちは、問題よりも高いところに上がり、見やすいところから問題の全体像をとらえることができないようだ。炭化水素を燃やし、自分の惑星をじわじわと殺している。太陽の莫大なエネルギーが無料で、しかも(大半の生物にとっては)永遠に使えるというのに。テスラモーターズは、電気自動車のインフラが現実であることを証明した。今後数年のうちに、新しいタイプのエンジンに携わるエンジニア、物理学者、建設業者への関心が高まるだろう。

これらのエンジンは再生可能エネルギーで動く。太陽、風、水素、核融合、そしてまだ発見されていないエネルギー源を使って。関連するエンジニアの需要はすでに高まり始めている。そういえば、HyperLoop(英語サイト)が求人広告を出していたっけ。

10. 自動運転車の補助インフラ開発者

自動運転車は以前からホットな話題で、大手自動車メーカーがこの新しいビジネスに参入している。つまり問題は、将来的に自動運転車が実現されるかどうかではなく、いつ実現されるかだ。しかし、スマートカーを作るだけでは十分でない。車と直接情報をやりとりして駐車場の空き状況を知らせるスマートパーキング、充電が必要になる前に車を誘導するスマート充電スタンドなど、さまざまなインフラが必要だ。

また、都市のインフラも無人運転車のタイプに合わせて、公共交通機関、発電所、充電施設、安全設備などが必要になる。そのため、この分野の専門家の需要も高まるだろう。インフラやエコシステムの拡充は、まだまだ発展途上のプロセスだ。

11. 産業用制御システムや重要インフラのセキュリティエンジニア

原子力発電所やスマートシティの制御を、Windowsなどの一般ユーザー向けOSに任せていいのだろうか?私の見解では、まったくもって許されないことだ。一般のユーザーがハッキングの被害に遭う可能性は約0.001%で、この程度のリスクは許容できる(リスクをここまで下げるには、優秀なセキュリティ製品が必要だが)。しかし、核攻撃の確率はゼロでなければならない。

1961年、米国はノースカロライナ州であやうく核爆発を起こすところだった。もし爆発していたら、その影響は広島の200倍以上だったと言われている。この話は冗談ではない(英語記事)。1961年は、まったくの偶然に救われたのだ。現在、ほぼすべてのものがコンピューターに制御されている。しばらくの間、この状態が続くだろう。だから、少なくとも最重要システム(戦略兵器、上下水道、配電網などの重要インフラ)にハッカーが手を触れないよう、念には念を入れておくべきだ。人類としての私たちの目的は、重要インフラのあらゆる構成要素を、ハッキングや不具合のないセキュアOSに移行することだ。このようなソリューションはいくつも存在する。それらを導入し、実装する専門家が今すぐにでも必要なのだ。

12. データサイエンティスト

16世紀後半、人類はバクテリアの存在を知った。それ以前の人々は、腐った食物による下痢など、あらゆる種類の事象をすべて呪術のせいにする傾向があった。その後、顕微鏡の登場により、人々の目の前にまったく新しい世界が開かれた。何万年もの間、人類と共に存在していた世界が。現在、データについて同じことが起きている。

データの世界は、私たちのひとりひとりを取り囲んでいる。このデータには、さまざまな内容が含まれている。私たちが何をどのような頻度で食べているか、どのような頻度でジョギングしているか、何を買っているか、どのくらいの食料を消費しているか、何時間車を運転しているか、交通渋滞が起きやすいのはどこか、結婚しているか、離婚経験はあるか、などなど。こういったデータをすべて見るのは…すべてに目を通すのは…つい最近まで不可能だった。現在、ロケットデータサイエンティストという新しい職業が生まれた。この道のプロが大量のデータを処理し、ビッグデータを出力、可視化するロジックをプログラミングして、これまで入手できなかった事実(ブログ読者の離婚率やメラノーマ患者の平均身長など)を把握している。

13. AIサイバーポリス

人工知能(AI)が私たちに何をもたらすのか。この問いに対する意見は1つではない。科学者やシンクタンクの大半は、AIは人間にとって日に日に拡大する脅威だと考えている。個人的には、AIは危険で大きな脅威だと思うが、その理由は簡単だ。人類が知性を持った生物へと進化するまでに何十万年もかかったが、AIには自己改善能力と、独自のコード、インフラの作成能力があり、数秒で進化するからだ。

つまり、AIの知性はものの数秒で1匹の虫からスティーヴン・ホーキング(Stephen Hawking)博士へと進化するのだ。さらに2秒もたてば、AIにとってホーキング博士は虫同然となるだろう。こうなった場合、AIが人類の存在価値を認めるのは、人類がAIエコシステムに不可欠な要素の場合のみだ。AIの立場からすれば、人類は脅威だ。赤いボタンを押して、AIの機能を停止できるのだから。

新たな任務を負った警官が登場するだろう。銃ではなく、高い知能指数で武装した警官だ。こうした警官の任務は、AIを規制し、AIのアーキテクチャや進化が安全な範囲に収まるようにすることだ。シンギュラリティの時代が来て、有機的形態がサイバネティクスと融合し、新たな形態「ホモサイバネティクス」となるまで、この任務は終わらない。

14. 仮想空間のサイバー兵士

未来の人類が血みどろの大戦争に突入する確率は、比較的低い。その理由を2つあげよう。第1に、今後何年もの間、火星をはじめ木星や土星の衛星、小惑星などに大勢の入植者を送り込む必要がある。1人1人が貴重な資産なのだ。第2に、第3次世界大戦となったら、人類は中生代へと大きく逆戻りするだろう。ベーコンもなければ、トリュフもワインもない!

誤解しないで欲しい。今は戦争中なのだ。しかし、それはサイバー戦争だ。「アンチハッカー」に対する需要は、とてつもなく大きい。必要なスキルを持っている人なら、Kaspersky Labの求人に応募し、職を得ることも可能かもしれない。このような人材の需要は大きい。サイバー犯罪と戦う軍隊は、圧倒的に人材が足りない。だから、微分積分、プログラミング、物理学、論理学が得意な現代っ子には、文字どおり世界を変えるチャンスがあるのだ。

15. 『マイノリティ・リポート』タイプの警官

私たちは人やモノのデータを収集しているときに、ランプの中から魔人を外に出してしまっている。この魔人は非常に強い力を持っているが、ランプをこすった人なら誰の言うことでも聞いてしまう。ビッグデータは、交通渋滞をなくす、平均余命を延ばす、交通事故の件数を減らすなど、生活を最適化し改善することができる。いわば、高精度の予言ツールのようなものだ。

Google Navigatorが、どうやって交通渋滞の有無を予測しているか考えたことがあるだろうか?Googleは交通監視カメラにアクセスできない。その代わり、何百万台ものスマートフォンにアクセスすることができ、そこからリアルタイムでデータが送られてくる。Googleはこのようにして、(過去の履歴では渋滞していたのだから)午後5時に国道xx号線で渋滞する可能性が高い、と判断する。

しかし、不都合な面もある。数十年にわたって、膨大な人数のペタバイト級のデータを蓄積し、その人の習慣や行動などを学習する(これはすでに行われていることだが)様子を想像してほしい。データからさまざまなパターンを作成し、「ある年齢で、ある一連の出来事を経験すると、その人はほぼ確実に人を殺そうと考えるようになる」と予測することができる。

これは、犯罪を未然に防ぐことができる1つのアプローチかもしれない。映画『マイノリティ・リポート』で描かれていた治安維持の方法だ。この考え方は、倫理学者の間で長期にわたる論争になるかもしれない。論争は学者たちに任せておくが、思想警察は将来、最先端の職業になる可能性がある。

16. バーチャルリアリティアーキテクト

2016年は、VRヘッドセットが店頭を飾った年だった。この業界の発展は間違いない。この最新テクノロジーとともに、ポルノやゲームも進歩していくだろう。しかし、コアユーザーの基本的なニーズが満たされたら、次は仮想世界を体系的に開発し、強化する時代が来る。おそらく、仮想の国や大陸を作るようにもなるだろう。

バーチャルリアリティを本当にハマるだけの価値あるものにするには、同じ構成要素をただ並べただけでは済まない。例えて言えば、建売住宅には、個性的な建築プロジェクトほどの魅力はない。バーチャルリアリティでは、才能あふれるアーキテクトが物理の法則に逆らい、現実世界で実現不可能な大胆なプロジェクトを作成することができる。このようなスペシャリストの需要は計り知れない。

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17. プロのARサイバーアスリート

サイバースポーツは数十億ドル規模の産業だ。高い成長性を示し、凄まじい勢いで新しいテクノロジーを採用している。たとえば、ドローンは登場からわずか数年だが、すでにARドローンレースのプロリーグが作られ、本物の賞金も出ている(英語記事)。

プロのサイバーアスリートになって、そこそこの暮らしができるとは、いい時代になったものだ。ほんの数年前、Dota 2の賞金総額は600万ドルを超えた(英語記事)。拡張現実の人気が高まるにつれて、ゲームの没入感は増すだろう。現実の世界とVRアクションを組み合わせた新しいタイプのスポーツには、確実なチャンスがある。つまり、今からそう遠くない未来、VRヘッドセットを着用した生身の人間が、本物の競技場を走り回りながら、敵と撃ち合う姿や障害物を乗り越える姿を目にすることになるだろう。これは壮観に違いない!

18. スマートホーム開発業者

スマートホームのコンセプトに、もはや珍しさはない。自動で開くドア、TV画面になる壁、スマート冷蔵庫…。持ち主の習慣やニーズ、利用可能な空間、家族構成、年齢などに合わせたエコシステムを採用する。このようなシステム、アルゴリズム、利用シナリオの開発は科学でもあり、芸術でもある。このシステムを創造できる人材の採用はすでに始まっている。

19. 人材スカウト

私たちは皆、個性的で独自の才能を持っているが、従来の教育プログラムが才能の発見に役立たないことは証明されている。GoogleやKaspersky Labなどの大手企業は、採用時に卒業証書を見ないところが多い。当社では、就職希望者のスキルやモチベーションで判断する。

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今後15~20年のうちに、新しい職業が生まれるだろう。それは鉱脈を見つけるのと似たような仕事だが、天然資源ではなく、大勢の人の中から本当に才能のある人を探すのだ。膨大な数のSNSプロファイルやデータベースをチェックし、有能さを示す特徴や、たぐいまれな能力の兆候を見つける。ふさわしい候補者が見つかったら、巧みな交渉術で候補者の心をがっちりつかむのだ。

20. デジタル時代の系図学者

この世を去るとき、本、写真、日記、過去の記録など、誰もがなにかしらのものを残す。このSNSの時代、新しいタイプの遺産が生まれた。デジタル遺産だ。まもなく、私たちは孫たちに、ファイルの入ったクラウドストレージへのカギ、FacebookやInstagramのデータを委ねるようになるだろう。SNSにはすでに、人間が物理的に記憶できるよりも多くの思い出が保存されている。この情報は、未来の世代にとって大きな価値となるかもしれない。

他人が残したものを調査、分析するのは、時間と手間のかかる難しい作業だ。将来、先祖の記憶を探り、家系図の作成や火急の問題への答え探しはプロの仕事になるだろう。また、「過去1,000年間に乗馬が好きだった親戚」のような興味深い事実を探ってくれるかもしれない。

21. 昔を懐かしむ人のためのホテル経営者

すでに、私たちのほとんどがインターネットに常時接続されている。あるいは、まもなくそうなるだろう。こうした状況から、特別なスタイルの観光旅行に対する需要が生まれる。名付けて「過去へ戻るおもてなし」、デジタルデトックスだ。その旅は、スマートフォンなどのガジェットをすべて預けるところから始まる。その後、馬などの移動手段を使って向かう先は、丸太小屋だ。小屋には環境に優しいカーペットが敷かれ、斧、ろうそく、本が置いてある。今のところ、それほど需要はないが、徐々に人気が上がり、増加し続ける。私は100%、そう確信している。

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