Bitcoinをめぐるビジネス模様

2013年11月13日

Bitcoinはデジタルの仮想通貨です。分散データベースを使用してピアツーピアで取引が行われます。つまり、BitcoinをコントロールしているのはBitcoinを利用する人々です。何かしら大本の機関があって、そこがBitcoinを管理しているわけではありません。また、国際取引に手数料がかからないほか、(問題視する人もいますが)Bitcoinを規制するルールがまったくありません。Bitcoinは実際に入手することができ、カナダのどこかにはBitcoinのATMまであると言われていますが、実際のところこの通貨(というより、このお金)は一連のデジタル署名であり、それがBitcoinと呼ばれているものなのです。

Bitcoin

好むと好まざるとにかかわらず、Bitcoinはマネーロンダリングにうってつけのメカニズムであり、インターネット上で追跡できない金融取引を実施しようとしている犯罪者にとっても都合の良い手段となっています。

確かに、Bitcoinでは合法的なものもいくらでも買うことができます。Bitcoinで買える合法的な商品の数は毎日のように増えていますが、そういった商品は(交換レートや取引手数料の問題はあるものの)従来の通貨でも購入できます。従来の紙幣で簡単にできないのは、違法なハッキングツールや武器を買うこと、ドラッグや盗んだ情報を売って得た利益を隠すことなど、インターネット上での法律的に問題のある行為です。これらはすべて、デジタル通貨を使うことで実行が容易になります

Bitcoinは2008年、中本哲史(Satoshi Nakamoto)というハンドルネームの人物のもとで活動する個人、あるいはグループの研究によって誕生しました。はじめて価値を持つようになったころは、1 Bitcoinの価値は1ドルよりはるかに小さかったものの、今では1ドルの価値が1ビットコインの価値を大きく下回ります。「Bitcoinとは何なのか」「なぜ価値を持つようになったのか」「概してどのような仕組みなのか」など、多くの人が疑問を抱いていることでしょう。

最初の質問にお答えします。Bitcoinはデジタルの仮想通貨です。印刷された紙幣や鋳造された硬貨ではなく、暗号化された文字列です。「Bitcoinになぜ価値があるのか」というのは難しい質問ですが、「ユーロやドルになぜ価値があるのか」という質問と、あまり難しさは変わりません。どんな通貨も、市場のさまざまな力によって価値が変動します。これはBitcoinにも当てはまります。

「Bitcoinの経済はどういう仕組みなのか」というのも説明が難しい質問です。平たく言うと、Bitcoinのすべての取引は、「BlockChain」という巨大な分散データベースに記録されます。「マイナー」(採掘者)と呼ばれる人々の分散ネットワークがあり、彼らが事実上Bitcoinを管理しています。採掘者は簡単な仕事ではありませんが、希望すれば誰でもなることができます。彼らの使命は、コンピューターの処理能力を使って、取引の無効化(使われたお金を元に戻すこと)からBitcoin取引を保護することです。BlockChainに記録される取引データは、文字通り「ブロック」と呼ばれます。すべての新しいブロックは、直前のブロックのハッシュ(デジタル署名)を含んでいなければなりません。そのため、すべての新規ブロックに、Bitcoinの取引記録全体が含まれているのです。このように、現在流通しているものより長い、正当なブロックを開発すると、新しいブロックを提出することができ、それが正式なブロックとなります。新規ブロックを作成できた採掘者には、新しくできたBitcoinが与えられます。

好むと好まざるとにかかわらず、Bitcoinはマネーロンダリングにうってつけのメカニズムであり、インターネット上で追跡できない金融取引を実施しようとしている犯罪者にとっても都合の良い手段となっています

ブロックの作成とは、極めて難解な数学問題を解決することですが、提出された解答はとても簡単に確認することができます。新たに生成されるブロックのほとんどは採掘者のグループが共同で作成したもので、新しいBitcoinは彼らの間で均等に分配されます。

しかし、Bitcoinは犯罪者やITに詳しい人だけのものではありません。ウォール街や世界の著名な投資家がBitcoinに大きな価値を見いだしており、相応の金額を投資しています。そのため、1 Bitcoinの価値がこの何か月かで急上昇しました。既存のBitcoinを合計した価値は、現在3,539,862,626.7474995ドルです。1 Bitcoinあたりの価値は(本記事の執筆時点で)296.9179ドルですが、今年初めは約13ドルでした。なぜ誰もがBitcoinに投資しているのか、おわかりいただけたでしょう。

価値あるものに引き寄せられるという点では、サイバー犯罪者は投資家とそれほど変わりません。ここまで読んだ方は、Bitcoinが多くの攻撃を受けていると思ったのではないでしょうか。もちろん、Bitcoinを狙うマルウェアは存在します。ボットネットやトロイの木馬を使ってBitcoinの「ウォレット」(ユーザーがBitcoinを保管する場所)に侵入し、Bitcoinを盗んでいるのです。

Kelihosは、Bitcoinを盗む機能を内蔵した有名なボットネットです。今年に入って、マシンをSkype上のボットネットに誘い込むマルウェアも出現しました。このボットネットは、被害者のコンピューターの処理能力を利用して、Bitcoinを大量に採掘しようとします。また、トロイの木馬ZeroAccessや、Bitcoinを採掘する別のMac版トロイの木馬もあります。マルウェア以外にも、研究者はBitcoinのウォレットアプリケーションにいくつかのぜい弱性を発見しました。

マルウェアやぜい弱性よりもさらに一般化しているのが、Bitcoinが売買される市場への攻撃です。昨年、米国のBitcoin交換所としては当時最大だったBitFloorが、サーバーに侵入されて250,000ドル相当の仮想通貨を奪われ、取引停止となりました。別の交換所Bitcoinicaも昨年侵入を受け、87,000ドル分のBitcoinが失われています。交換所Mt. GoxとBitcoin保管サービスInstawalletはDoS攻撃の標的となり、両サービスともダウンしてしまいました。今年4月には、Mt. GoxのクラッシュによってBitcoinの価値が急落するとの憶測が流れましたが、Mt. Goxはそうした主張を否定しています。

最近、コーネル大学のイテイ・イヤル(Ittay Eyal)氏とエミン・ガン・サイアー(Emin Gun Sire)氏という2人の研究者がBitcoinに関する論文を発表しました。Bitcoinのプロトコルには根本的な欠陥があり、比較的少数の参加者グループが強大な権力を得て採掘プロセスを掌握し、システム内の均衡が崩れるほど大量の価値を手にしてしまう可能性があるというのです。さらに、この研究者らによれば、いわゆる「自己中心的な採掘者」がBitcoin採掘リソースの25%以上をコントロールしてしまうと、最近のBitcoin取引をなかったことにして、他の人の採掘作業を無効にすることが可能になるといいます。

「イテイ・イヤルと私は、ある攻撃の概要をまとめました。その攻撃によって、少数派の採掘者グループが公正な取り分を上回る利益を手にし、多数派となるまでその数が増加していきます。この点に達すると、Bitcoinの価値提案は崩壊します。Bitcoinは1つの集団の支配下に置かれ、分散型ではなくなり、誰が採掘に参加するか、どの取引が確定されるかを支配団体が決定し、取引の取消すら意のままに可能になってしまいます。この雪だるま式のシナリオを実行するのが、ジェームズ・ボンド並の技術を持った悪意のある犯罪者とは限りません。採掘作業で稼ぐお金をもう少し増やそうとする人々が協力した結果、起こり得ることなのです」。研究者らは、自分たちの論文の研究結果を強調するブログ記事にこのように記しています。

もちろん、異を唱える人もいます。

Kaspersky Labのシニアセキュリティリサーチャー、セルゲイ・ロズキン(Sergey Lozhkin)は、次のように語ります。「他のあらゆる科学研究と同じように、Bitcoinの欠陥とされるものはコミュニティによってレビューと分析が行われなければなりません。しかし、この『ぜい弱性』の本質が、コンピューター技術ではなく経済の分野に根ざしていることは、すでにわかっています。一部の個人の集団(もっと可能性が高いのは、無限に近いコンピューター処理能力を持つ強力な政府機関)がBitcoinの採掘プロセスをある程度コントロールできるようになったからといって、それがBitcoinの衰退や終焉を意味するとは限らないはずです。したがって、この論文の著者が騒ぎ立てていることは、理解はできますが、決して正しいとは言えません。現時点でBitcoinにとっての最大の脅威は、技術ではなく政治です。」

ロズキンは重要な点を指摘しました。確かに政治はBitcoinにとって大きな障壁です。先日のThe Wall Street Journalの記事によれば、米国の上院で委員会公聴会が開催され、Bitcoinが違法商品の取引を助長している可能性や、Bitcoinを使った脱税の可能性について議論されたそうです。

さらに広い範囲を見てみると、少なくとも米国の憲法では、お金を作る権限は議会にあるとされています。つまり、そもそもBitcoinやBitcoinの採掘が合法かどうかさえ怪しいのです。

Global Research & Analysis Team(GReAT) ディレクターのコスティン・ライウ(Costin Raiu)はさらに踏み込み、この研究の中心となっている前提に問題があるとしています。

「この攻撃は、一部の身勝手な採掘者が長期間にわたってブロックを隠すことができる、という考えに基づいたものです。理論的には、この研究者たちの言うことは一理あります。統計的に見れば、この攻撃は不可能です。というのは、身勝手な採掘者たちがブロックを隠したとしても、別の”身勝手ではない”採掘者がこれを見つけてBlockChainに公開するからです。」

ライウはさらに、イヤル氏とガン・サイアー氏の調査が示したぜい弱性は確かに存在するがこれによって生じるリスクは非常に小さなものだと述べ、次のような可能性にも触れました。

「しかし、別の可能性もあります。彼らは、人々にBitcoinを売らせるためにわざと話題作りをしたのかもしれません。これでBitcoinが値崩れを起こし、底値をついたときに、頭のいい人たちがBitcoinの購入を開始する。別の賢い人たちが”これは全部デマだった”と言えば、Bitcoinの値は再び上昇する。そうして、この頭のいい人たちが富を手にする、というわけです。」

他の研究者も、イヤル氏とガン・サイアー氏が主張するぜい弱性は筋が通っていないと指摘しています。

プリンストン大学のエド・フェルトン(Ed Felton)氏は、同氏が「晴天時のみの採掘」と呼ぶものによって、採掘者のモチベーションが高まると述べています。多くの場合、個人の採掘者は巨大なブロック生成グループの1つに参加せざるを得ませんが、2つのグループから利益を得るというのはどうでしょうか?悪意のある採掘グループと善意のグループの両方に所属し、2つのグループを行ったり来たりして、最も長いブロックを最も早く生成しそうなチームに貢献するのです。

そんなわけで、「Bitcoinを使うべきか、使うべきでないか」という質問には、私は答えられません。Bitcoinには間違いなくメリットがあります。簡単に使えそうですし、本当の意味で国際的であり、Bitcoinを使えるお店はどんどん増えています。従来の通貨では買えないものもBitcoinなら買えます。ユーザーの知識次第では、政府にBitcoinのウォレットを凍結されることもありません。非常に匿名性の高い取引を実行することもできますし、脱税も、不正に得た利益を合法化することも可能です。国際的な交換所で一定の料金を支払えば、Bitcoinを従来の通貨に振り替えることもできます。できることはまだまだあります。善意の目的であれ、完全なる悪意であれ、Bitcoinの可能性は無限にあるといえるでしょう。

興味がある人は、Bitcoinを使ってみてください。ただし、そのリスクは知っておくべきです。ウォール街はリスクを承知で投資しています(ウォール街が投資しているから絶対安心ということはありませんが)。Bitcoinのウォレットは間違いなくサイバー犯罪者の標的ですが、それは銀行口座も同じことです。交換所も犯罪者に攻撃されていますが、銀行も同様に狙われています。私が最も心配しているのは、「政府がBitcoinを違法と判断した場合はどうなるのか」「誰かがBitcoinを支配し、その大半を手中に収めるとどうなるのか」「交換所が攻撃されて長期にわたってダウンした場合、どうなるのか」ということです。どうなるのかと言うと、多くの人が莫大な金額を失う恐れがあります。